HOME

弁護士紹介

有賀 幹夫
有賀 幹夫

弁護士

経歴

早稲田大学法学部卒業
司法研修所入所(57期)
平成16年10月 第二東京弁護士会に弁護士登録(57期)
平成16年10月 匠総合法律事務所入所
平成18年1月 弁護士法人化に伴い、社員弁護士
平成25年1月 パートナー弁護士就任
第二東京弁護士会住宅紛争審査会 紛争処理委員
第二東京弁護士会労働問題検討委員会 委員
第二東京弁護士会法科大学院支援委員会 委員

執筆

【著書】
『建築工事請負契約における瑕疵担保責任と損害賠償の範囲』新日本法規(共著)
『耐震化の法律読本 法的リスクを回避するためのQ&A80』建築技術(共著)
『震災復興の法律的課題 岩手県・被災地行政から寄せられた法律相談事例』日刊岩手建設工業新聞社(共著)
『絶対トクする[土地・建物]の相続・税金・法律ガイド』建築知識(共著)
『住宅建築業・設計事務所・部材メーカーの説明義務と警告表示』新日本法規(共著)
『建築・法律トラブルらくらく回避マニュアル』建築知識(共著)
『建築設計・施工クレーム対応マニュアル』新日本法規(共著)

主な取扱分野

建設・建築関連取引、不動産関連取引、借地・借家その他一般商取引・企業法務、債権保全・債権回収関連法務・事件、民事・商事紛争/事件(建築・土木関連、借地・借家、不動産関連、家事・相続関連、労働・人事労務、交通事故・医療過誤その他各種損害賠償請求、企業内・企業間紛争その他一般民事・商事紛争/事件ほか)、破産・倒産事件、刑事事件ほか

契約法務取扱実績

設計工事監理業務委託・建築請負契約、賃貸借契約、フランチャイズ契約、金銭消費貸借契約、不動産・商品売買契約、債権譲渡契約、各種取引に応じた業務委託・商品販売委託・役務提供契約/コンサルティング契約、新規ビジネス関連契約(カーシェアリング等)、各種担保権設定契約(抵当権、質権、譲渡担保権、集合動産譲渡担保権等)、事業譲渡・事業承継契約、知的財産権関連契約(共同研究、ライセンス等)ほか

訴訟交渉の主な実績

【建設・建築瑕疵事件】
基礎コンクリートのクラックの瑕疵該当性が問題とされ,基礎再築費用相当額の損害賠償が請求された訴訟事件
建築瑕疵を理由に建て替え費用相当額の損害賠償請求がなされた事案
新築住宅の建築瑕疵に基づく損害賠償が請求された事案
施主側において、設計、施工業者の建築工事における欠陥等を理由に、請負契約を途中解除した上で、業者に対して損害賠償請求をしたところ、業者からは出来高相当の請負代金反訴請求を受けた訴訟事件
構造上の建築瑕疵に基づく損害賠償請求に対して,消滅時効の主張が認められた事案
残請負代金請求に対して、建物の基礎の構造欠陥等が抗弁として主張された請負代金請求訴訟事件
建物基礎の構造上の瑕疵が争点となり基礎の再築費用相当額の損害賠償請求がなされた事案につき,構造上の瑕疵を実質的・技術的観点から判断し,瑕疵を否定した訴訟事件
設計変更が争われ,建物の間取り等が当初契約図面とは異なるから瑕疵である等と主張されて,損害賠償請求がなされた訴訟事件
隣地の盛土造成工事により被害者所有の建物が不同沈下したことに基づく、隣地地権者らに対する損害賠償請求訴訟事件
東日本大震災により,擁壁が崩落・毀損し,建物に不同沈下が生じたことによる損害賠償請求訴訟事件
リフォーム住宅の施工瑕疵に基づき,請負代金の支払いを拒絶された請負残代金請求訴訟事件
地下立体駐車場内が降雨の際に水没し,車両が毀損されたとして,損害賠償請求がなされた事案
シックハウス症候群に罹患したことを理由とする損害賠償請求訴訟事件
化学物質過敏症に罹患した施主が,健康な住宅であることを絶対の条件として,請負契約を締結したところ,室内空気汚染が発生した事案
建築瑕疵を理由とする建替費用相当額の損害賠償請求訴訟事件
そのほか、種々の建築瑕疵、請負代金請求、追加変更工事代金請求事件多数


【工事における現場事故関連事件】
建築工事の現場で,足場事故が発生し負傷した作業員が,元請負業者に対して損害賠償を請求した訴訟事件
そのほか、労災に関わる現場死亡・傷害事故関係交渉・刑事・行政対応


【近隣紛争事件】
下請業者が行った解体工事の振動により近隣建物に発生した亀裂等の損害を,事業主が被害者に賠償した上で,当該下請業者に対して,被害者に賠償した金額を損害として賠償請求した訴訟事件
そのほか、距離保持義務違反、目隠し規制等、相隣規定関係事件


【不動産関連取引事件】
建築条件付き土地売買契約における買主・施主が,売主・請負業者側の契約解除の主張を争い,契約の存続確認及び1日につき3万円もの損害賠償請求を求めた訴訟事件
そのほか、説明義務違反、土地売買契約の瑕疵担保責任に基づく契約解除、損害賠償等に関する事件


【交通事故事件】
交通事故により,被害者の脚に,知覚鈍麻,瘢痕等の後遺障害が残ったため,後遺障害逸失利益等の損害を賠償請求した訴訟事件
交通事故により被害者に脊柱の変形障害,瞼の線状痕の後遺障害が残ったため,後遺障害逸失利益等の損害を賠償請求した訴訟事件
そのほか、物損事案


【賃貸借関連事件】
賃借人のルームシェア人に対する建物明渡し請求訴訟事件
そのほか、滞納賃料請求、契約解除、明渡し請求事件多数


【フランチャイズ関連事件】
フランチャイザーが,フランチャイジーの倒産により客が被った損害の賠償を,客より請求された訴訟事件
フランチャイザーに対する名板貸責任、使用者責任請求事件(フランチャイザー側)
そのほか、フランチャイズ契約の解除、ロイヤリティ請求等に関する事件


【労働事件】
労働契約の解消(懲戒解雇、普通解雇)に関連する紛争事案
団体交渉
残業代請求訴訟、仮地位仮処分手続、労働審判等


【企業内・企業間紛争事件】
元従業員が新設した会社の営業行為等について,旧会社(前職会社)が,逸失利益等の損害賠償請求をした訴訟事件
従業員による業務用PCデータやWebページ情報データの削除行為に関し,損害賠償請求が認められた訴訟事件
そのほか競業避止義務違反、機密保持義務違反、不正競争防止法違反関連事件


【家事・相続関連事件】
夫婦関係調整・離婚、婚姻費用分担、親権、養育費、離婚に伴う財産分与・慰謝料、不貞行為による損害賠償請求、相続・遺産分割等に関する調停、訴訟、特殊事案として不貞行為の相手方がストーカーとなったことによるストーカー規制法対応等
被相続人の実兄が、相続財産である被相続人名義の預金を解約し受領したことが、不法行為であるとして、相続人より、損害賠償を請求された訴訟事件


【医療過誤事件】
人工妊娠中絶の手術の際に、子宮穿孔と小腸穿孔を引き起こされた女性の損害賠償請求交渉事件
医療過誤に基づき細菌性髄膜炎に罹患した乳児の損害賠償請求訴訟事件


【破産・倒産関連事件】
破産手続開始申立事件(個人・法人)/破産管財
民事再生
破産管財人による否認権行使訴訟事件
名目的取締役・名目的監査役に破産法上の悪意推定規定が適用されるか否かが問題となった事案
下請建設会社の破産管財人が,元請建設会社に対して,出来高請求をした訴訟事件


【そのほか】
一般民事・商事紛争、損害賠償請求案件等 多数


  • 【基礎コンクリートのクラックの瑕疵該当性が問題とされ,基礎再築費用相当額の損害賠償が請求された訴訟事件】第1審:全面勝訴,控訴審:全面勝訴(確定)
  •  建物の基礎に,無数のクラックが確認されたことに端を発し,所有者(発注者)側は,当該建物を新築した事業者(受注者)に対して,強硬に苦情を述べ,これを受け,事業者(受注者)は,目視調査,シュミットハンマー打撃調査,コア抜きによる圧縮強度試験,中性化深さ試験,グルコン酸ナトリウム法による水セメント比の配合推定試験等を行った。
     このうち,水セメント比の配合推定試験で一部試験結果が不良であったため,所有者(発注者)側は,現場でコンクリートに加水が行われた等との主張を展開したことから,深刻なトラブルに発展し,その交渉過程で,事業者(受注者)側は,基礎を再築する旨,一筆入れることとなった。
     しかし,上記に関する当事者間の任意協議がまとまらず,双方弁護士が介入し,任意交渉,その後に実施された調停手続がいずれも決裂した結果,所有者(発注者)側より,基礎再築費用相当額の損害賠償請求訴訟が提訴されるに至った。上記事件について,事業者(受注者)側の被告訴訟代理人として関与した。

     鉄筋コンクリート構造物では,コンクリートが乾燥し水分が蒸発する過程で,コンクリートが鉄筋その他の内部的拘束を受けることによって,クラックが発生することがある。
     鉄筋を例にとってみれば,乾燥収縮しない物体である鉄筋により拘束を受けたコンクリートは,乾燥し収縮した際には,収縮率の分だけ「割れる」しかないという形で理解できる。これは鉄筋コンクリート構造物の宿命的な問題といえる。
     他方で,劣悪なコンクリート施工がなされれば,その「程度」が甚大となることはあり得るため,一概に,「クラックゆえに施工者に責任がない」とはいえない。
     本訴は,基礎コンクリートに発生したクラックが許容される程度を超えるものであるのか,その原因は何であるのかという点が,大きな争点となった事案である。
      ‥該コンクリートは,JIS認定工場で製造され,かつ,製造に供された材料は,各種材料試験に合格
     ◆‥該コンクリートの配合計画にでは「単位セメント量」「単位水量」「単位骨材量」「水セメント比」等ともに適切な配合が実施
      当該基礎コンクリートのコア抜き供試体を試験した結果,構造耐力(圧縮強度)と耐久性(中性化抵抗性能等)ともに問題なし
     という状況のもと,所有者(発注者)側は,例えば,
     顱.哀襯灰鷸瀬淵肇螢Ε猖,砲茲詛杞膺篦蟷邯海侶覯漫っ碓魅札瓮鵐販未著しく少ない供試体が確認された。また,供試体相互でバラツキがある。
     髻ヾ霑辰蝋澑に曝されものであるところ,貫通クラックがあるため,放置すると鉄筋の爆裂を引き起こす。また,これにより防水性・水密性が低くなり,耐久性が阻害される。クラックの発生・拡大は,建物の基本的な安全性を損なう瑕疵である(放置した場合における将来の観点)。例えば,ある権威のある学会の技術書籍には,「ひび割れ幅と鉄筋の腐食の調査結果」(a)や「載荷時のひび割れ幅と鉄筋の露出長さ」(b)の表があり,これらの表によると,ひび割れ幅が0.05个ら0.15个両豺腓砲蓮づ感擇力出の長さ(鉄筋の付着破壊の長さ)が10个ら90弌い泙拭い劼啌笋貮が0.02舒焚爾任△辰討癲ど綽の程度が25%に及び,ひび割れ幅0.20个任錬僑亜鵑砲盖擇鵑任い襪海箸箸覆襦
     鵝.ラックの発生数が異常で進行性がある。
     堯〇業者側とは基礎について造り替える旨合意しており,その旨の書面(事業者からのファクシミリ)もある,
    等々を指摘し,クラックの発生原因が熾烈に争われた。
    ▼ 颪紡个靴董奪灰鵐リート部材や施工方法に関する各種技術的基準は,コンクリートの品質確保,ひいては構造耐力や耐久性を発揮する「目的」のために定められるものであるはずであり,この「目的」が実現できていることがコア抜き等のいわば実証試験の結果,確認された状況下(前記),単位セメント量を「推定」する試験のみに依拠し,コンクリートの品質を論じる必要性はあるのか,合理性はあるのか。
    ▼ 鬚紡个靴董凋鬚 (a)の表は,腐食の程度に関わるものであるにもかかわらず,コンクリートが打設されてからの「時間」の観点がない。腐食の問題であれば時間の観点が必須と思われるにもかかわらず,である。特段の留保なく一般的に紹介されている表ではあったが,果たして適用することが適切なのかという観点から原論文を調査すると,この表は,被り厚さ15个龍〇鄲里鬘看間海岸で暴露し,さらに1年間海中に浸漬してひび割れ幅と鉄筋の腐食状況を報告した実験の結果の模様であった。そうでれば,普通の環境下のものとは全く異なるものであり参考にすることは許されない。
     鬚(b)の表は,「載荷時」,すなわち,コンクリートに引っ張り力をかけた際に,コンクリートが鉄筋から剥離するという物理現象を検証した実験結果に過ぎず,「載荷」前提なくして,ひび割れ幅から鉄筋の露出長さを導ける関係にはないはずである。
    ▼ 鵑紡个靴董奪ラックの発生「数」を問題とするべき理由はない。計画供用期間の級が長期および超長期のコンクリートでは,コンクリートの乾燥収縮率は,8×10-4以下とされる。そうであれば,合計幅がこの範囲であれば,乾燥収縮として許容範囲となり得るのではないか。
    ▼ 瑤紡个靴董坦里に,協議・交渉により解決したいとの観点から,当事者間での任意協議に際し,そのような書面を送付したことはあったが,解体の時期,方法,範囲等は何ら定められておらず,当事者間の任意交渉決裂→代理人間交渉決裂→調停での協議決裂という状況下では,あくまでも,「結果として決裂した交渉の一過程で提案された一つの考え」に過ぎない。ここに法的拘束力が及ぶべき理由はない。
    等々と反論を展開した。
     なお,上記以外にも,施工過程に関し,環境温度変化,運搬計画と現実の運搬状況,打ち込み方法,養生期間などについても,技術文献・基準整合性が問題となったところではある。
     結果は,瑕疵該当性は否定され,この判決は控訴審で確定となった。

     上記訴訟からは,
      ■ 当該技術的基準の実質的な意味
      ■ 交渉に際し,何らかの提案をする場合,どのような方法・表現で行うのが適切であるのか。
    という点が学ばれるべきであろう。適用すべきではない技術的基準を持ち出し,その基準が意図するところに注意を向けず問題点を論じるのは有害無益であり,あらぬ誤解を生む要因となるし,また,紛争となっている相手方に対して,不用意に誤解をもって受け取られる表現で,提案をしてしまうと,ボタンのかけ違いにより,その後に悲劇的な行き違いを生む。上記紛争は,紛争発生時から控訴審判決確定までの間に,実に5〜6年もの期間を要している。
     鉄筋コンクリート造構造物の乾燥収縮クラックは,技術者にとっては当然のことであっても,それが一般消費者にとっても当然とは限らない。クラックが生じれば,不安を持つであろうし,また美観を害することもあろう。これをどのように顧客に説明をし,周知を図っていくべきか,という点については,建設に携わる事業者側の課題といえるのかもしれない。
  • 【建築瑕疵を理由に建て替え費用相当額の損害賠償請求がなされた事案】第一審実質勝訴:確定
  •  施主は,平成14年に,建築施工業者に対して,〔鵤牽宛弔傍擇巫赱咾砲弔,瑕疵修補に代わる損害賠償,工期遅延に基づく遅延損害金,0崋嬶租を求め,訴訟を提起した。その後,約6年間にわたり,審理が継続し,当事者本人,証人尋問等が行われた結果,裁判所は,建築施工業者が,施主に対して,「1500万円〜1600万円」を賠償せよという和解案を提示した。
     同和解案は判決書のような体裁であり,事実認定,瑕疵の認定を前提としたものであった。また,通常の訴訟進行に従えば,同段階で,和解が成立しなければ,同和解案で記載された事実認定,瑕疵の認定を前提に,判決という状況であった。
     この段階で,当事務所は,建築施工業者より依頼され,多額の損害賠償を回避するために訴訟代理人に就任し,業者側代理人として訴訟追行を開始した。

     当時和解案で認定された瑕疵で,最も多額の賠償金額となったのは,_虻下地合板,構造用合板を巡る瑕疵(F1でなければならないにもかかわらず,粗悪品が使用された)であった。
     また,⊆錙垢類赱咾涼罎砲蓮な篏す事を実施した方がよいと考えられる項目もあったが,裁判所が提示した補修工事費用(施主側の資料ベース)が著しく高額であった。
     そこで,本件においては,各瑕疵に対して,逐一技術的な反論をすることは当然,特に上記ゝ擇哭△貿枸犬靴董ち幣抒萋阿鮃圓辰討い必要があった。

     争点,砲弔い討蓮せ藩僂気譴森臠勅体にF1との表記がなかったため(物件自体古かったため,当該物件建築当時は,合板にF1という表記をすることが一般的ではなかった事情等があった。丁度,過渡期であった。),ストレートにF1合板を使用したと反証することが困難であった。
     そのため,合板の問屋,製造工場等,関係業者へ問い合わせを行い,「当時,合板には必ずしもF1等の表記はなされなかった。しかし,本件において使用された合板は,F1のはずである」ことを明らかにするために,種々の調査を行い,業者の納品書(F1との表記はないが,一般的な合板単価と比較して,高額な製品であったこと),報告書等の証拠を収集し,外堀から埋めるように,反証活動を行った。
     また,争点△砲弔い討蓮じ帖垢類赱咾亡悗垢覽蚕囘反論と併せ第三者一級建築士と協議を行い,建築物価資料,第三者業者の見積もり等を作成し,個々の瑕疵項目毎に,相当な補修工事単価を算出した。

     結果,裁判所の事実認定は,和解時の認定から覆り,判決においては,争点,砲弔,「被告●●にF1と同等品を納品したという●●産業株式会社職員の陳述に特に疑いを差し挟む事情は見当たらず(なお,ホルムアルデヒド含有量に関する合板の等級表示は,当時は任意であったことが明らかであるから,表示の不存在が直ちにホルムアルデヒド多量含有を意味するものではない。),上記証拠及び弁論の全趣旨によれば,F1合板の使用が認められる」として,瑕疵はないと認定された。
     また,△砲弔い討蓮ぐ貭蠶度瑕疵と認定されはしたものの,施主側の根拠ない補修工事見積もりは

     基本的に否定され,具体的な根拠とともに提出した資料に基づく金額がベースとして認定された。

     結果,瑕疵に関わる補修工事費用としては,損害額は300万円程度におさまった。
     なお,工期遅延を巡る問題については,追加変更工事が多数あったこと,工事中の打合せが微に入り細に渡ったこと等,施主側の事情を個別具体的に立証したところ,施主側の事情も斟酌され,約定遅延損害金の25%程度は施主負担とされた。
     本裁判では,一級建築士等,建築工事の専門家が裁判所に関与しておらず,それゆえ,当事務所が介入した当時の裁判の状況は,瑕疵を巡る技術論,補修工事費用等を巡る整理が,長期間審理を継続し判決間近であったにもかかわらず,あまりにも不十分と云わざるを得ない状況であった。この状態のままで判決が下されていたらと考えると恐ろしくなる。
     やはり,技術訴訟には,当該技術の専門家の関与が不可欠であろう。
  • 【新築住宅の建築瑕疵に基づく損害賠償が請求された事案】第一審全面勝訴:確定
  •  本事案は,ある住宅フランチャイズに加盟している工務店が,同フランチャイズの規格部材を用い,建築した建物につき,施主から瑕疵を主張され,訴訟を提起された事案である。業者側訴訟代理人として訴訟を追行した(なお,施主は設計監理者に対して調停申立を行い,調停が成立したにもかかわらず,後には設計監理者に対しても訴訟を提起)。

     本事案の特徴は,例えば,断熱材間に若干の隙間は確かにあり,補修した方がよいといえばそのようにもいえる,などという事項が,約30項目程度瑕疵として主張されるとともに,工事中になされた追加変更の清算(当初見積書からの数量が減少しているので,清算せよ,工事後に行われた清算には漏れがあり不当,といった主張)が詳細に争われた点に特徴がある。

     施主側の主張は,極めて細かかったため,約3年間以上,審理され,ようやく証人尋問等が終わった後にも,裁判所が改めて詳細な状況を理解するために,判決期日が6回程度延期されることによってさらに長期化し,結局,判決言渡しまで4年以上の歳月を要した。

     当方は,施主の主張の項目全てに対して,詳細に事実関係,関係技術資料を提出し,全面的に争った。
     例えば,先の断熱材の欠損の例についていえば,熱損失係数,熱貫流率の計算を実施し,施主側が主張している状況を前提としても,有意な差異はほとんど無いといった具合である。

     判決では,瑕疵は一切無く,これ以上の清算も不要という完全勝訴判決が下された。
     建築瑕疵を巡る事案において,瑕疵による損害が1円もないと認定されることは珍しく,長期間,丁寧な訴訟活動を行った成果が実を結んで事案として印象に残っている。
  • 【施主側において、設計、施工業者の建築工事における欠陥等を理由に、請負契約を途中解除した上で、業者に対して損害賠償請求をしたところ、業者からは出来高相当の請負代金反訴請求を受けた訴訟事件】一審一部勝訴:控訴審和解
  • 本件事案は、施主において、業者の行った、甚大なカビ被害・結露被害をもたらす設計・施工、施主との打合せのない無断工事、第三者一級建築士の調査により判明した建築基準法令違反(仕様規定違反)等の途中建物の欠陥、事前の説明内容との齟齬等に基づき、業者側に対して、消費者契約法違反(請負契約の取消)、債務不履行責任(請負契約の途中解除、損害賠償)、不法行為責任を追及した事案である。施主側の原告訴訟代理人として訴訟を追行し、工事途中の建物を解体撤去することを前提とする原状回復を求めたが、途中解約事案における必然的結果として、業者側から、工事出来高として1400万円程度の請負代金請求を受けることとなった。
    法律論の原則では、請負契約の途中解除事案においては構造耐力上の危険性を基礎づけることができない限り(工事の欠陥については構造欠陥もあったが、施主側が工事中に既に業者側に大部分は対処させていた事情があった)、出来形部分の解体撤去を前提とする原状回復は認められ難く、業者側の既履行部分については出来高請求を受けることが避け難い事案であった。
    しかし、根本的な設計過誤等による構造的な原因に基づく結露被害は凄まじく、カビが天井から「つらら状」にぶら下がる程であり、居住者において健康被害が生じる異常事態であった。また、建築基準法令違反、施主側の意向が反映されない無断工事等が無数に存在し、このような事態のもと、高額の請負代金の支払を余儀なくされる依頼者の心情は察するに余りある事案であり、任意の交渉では双方の対立は埋まらなかったため、先行して訴訟を提起することとなった。
    第一審は、本件建物には「構造的原因に基づく結露被害」等があり、これらを瑕疵と認定しつつも、全部解除を認めるに足りないとし(その後の工事により本件建物の利用は可能という判断を前提)、施主側の請求は一部を認容するに止め、業者側の出来高請求をほぼ全額、認容した(差し引きをした場合1000万円程度は追加して支払わなければならない状態)。
    なお、判決に先立ち第一審裁判所は心証を事実上開示し、施主側に対して業者側に金員を支払うことによる和解解決を提案したが、施主側において1円も支払う意思はないと断固拒絶した経緯がある。
    実質敗訴の第一審判決を受け、施主側は控訴提起した。控訴審では、当該建物の構造的な欠陥に基づく結露被害の深刻さ、建築基準法令違反等の重大性を訴え、工事部分の解体撤去を内容とする原状回復を主位的に主張しつつも、それのみならず、予備的に、個々の欠陥部位毎に補修工事費用を積算し、これらの全てを補修するためには数千万円の費用を要し、業者側の既履行部分に相当する出来高金額を遙かに凌ぐ旨、主張した。
    控訴審では、裁判所主導のもと和解協議がなされ、業者側が出来高請求を全額放棄することを承諾したため、施主側も請求を放棄し、0:0で和解が成立した。
    第一審では、第三者一級建築士2名の証人尋問、結露・カビ被害に関し我が国有数の専門家である国立大学名誉教授の証人尋問、施主(2名)・業者本人尋問、本件現場で工事を行った業者の証人尋問が、丸2日の期間をかけて行われた。なお、施主側が訴訟上提出した主張書面の数は、準備書面、検証申立等を含めれば、20通を遙かに超え、事案の内容、個別欠陥項目を立証するための書面(陳述書のみで約40通、数百頁の瑕疵説明資料を含む)、第三者一級建築士、大学名誉教授等の私的鑑定書等の書証は、約150通に及んだ。契約締結過程における業者の説明、設計業務のあり方、瑕疵(構造的原因による結露、建築基準法令違反、契約違反等)、請負契約の解除の効力、追加工事の有無・代金額等あらゆる事項が争点となり、これらの争点の数は、瑕疵等を含め約120項目に及ぶ事件であった。
  • 【構造上の建築瑕疵に基づく損害賠償請求に対して,消滅時効の主張が認められた事案】第1審・第2審全面勝訴
  •  本件事案は,平成11年完成物件の施主が,業者側に対して,平成18年12月19日に〃物の不同沈下,筋交いの不存在等を理由に,不法行為ないし瑕疵担保責任に基づき損害賠償請求をした事案である。なお,当該施主は,第三者一級建築士から建物の瑕疵に関する調査報告書(平成15年12月20日付)を書証として提出していた。

     本件の争点は,前記´△法的に瑕疵に該当するか否か,また,損害賠償請求権が除斥期間の経過ないし時効により消滅していていないか否かという点である。
     【除斥期間・時効の補足】
     瑕疵担保責任の除斥期間は,契約上,引渡から5年(品確法施行前の物件)
     不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は「損害及び加害者を知った時から三年」
     (民法723条)

     まず,瑕疵の問題に関しては,”堝営晴爾亡悗錣襯譽戰訛定の結果の分析方法が不当であったため,当方において3mタームでの不同沈下の状況を●/1000で計算したところ,3/1000未満であったことから,施工精度ないし地盤の若干の圧密の問題であって許容範囲内である旨反論し,また,筋交いの不存在については,確かに建築確認申請図書では筋交いを設置する旨図示されているが,本件契約においては,土壁・貫工法が前提とされていた以上,合意内容通りであって瑕疵ではない旨,反論した。
     もっとも,上記技術論を主張,立証すると審理が長期化することが予想されたことから,除斥期間の経過,及び,消滅時効を全面的に強調し,裁判所に対しては,まず,除斥期間,消滅時効に関わる事実関係を認定していただきたい,その上で,中間判決を下して欲しい(なお,当方の主張が認められた場合には,「中間」判決ではなく,事件終了を意味する「終局」判決となる)旨,要請して,事実関係に関する人証調べが先行して行われることとなった。

     第一審は当方の主張を認め,控訴審も当方の主張を認めた。
     瑕疵担保責任の除斥期間については,「控訴人は,平成12年6月7日,被控訴人に電話をして,家が傾いている,柱が傾いている,家を建て替えて欲しいなどと言ったものであるが,平成18年12月10日に至るまで書面による請求もなく,具体的な瑕疵を特定してその修補を請求した形跡はない。平成18年12月10日付けで●●弁護士が出した通知書(甲5)には,過去に補修を要求したと記載されているが,前記のとおり,控訴人は被控訴人から大丈夫だと言われて安心していたと供述しているのであって,その真偽はともかく,少なくとも,被控訴人から説明を受けた後は控訴人が具体的な補修の要求をしていないことは明らかであり,控訴人の上記のような口頭でのクレームをもって瑕疵修補請求を裁判外で行使したものと認めることはできない」と判示して,除斥期間が経過している旨認定した。
     次に,不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効に関しては,平成15年5月ころまでに施主は弁護士を紹介されたことを前提として認定し,加えて「専門家による見解は,損害賠償請求に理由があるか否かの判断に必要とする場合があるけれども,損害賠償請求の可能性を判断するのに,必ずしもこれが必要であるとは解されないし,前記のとおり,「損害を知る」とは損害の発生を現実に認識すれば足りその程度や数額を知る必要はないのであるから,1級建築士の報告書の完成やその説明を待つまでの必要はないといわなければならない。」「したがって,控訴人の被控訴人に対する不法行為による損害賠償請求権は,仮にこれが発生していたとしても,本件訴訟提起前,遅くとも平成15年6月20日には時効により消滅したものというべきである。」と判示して時効消滅を認定した。
  • 【残請負代金請求に対して、建物の基礎の構造欠陥等が抗弁として主張された請負代金請求訴訟事件】第一審勝訴:控訴審勝訴的和解
  • 業者側の残請負代金請求に対し、施主側より、建物のベタ基礎の厚み不足、基礎立上り部分のクラック等の構造上の瑕疵がある旨の抗弁が出された事案。業者側の原告訴訟代理人として訴訟を追行した。
    基礎の厚みの問題に関しては、施工精度の問題もあり、設計図書記載のとおりの厚みを完璧に確保できていない物件が、現実、散見される。本件では150个寮澤弯渊饐紊了惻┐紡个110个靴確保できていない部分もあり、また、散水試験の結果、基礎立上り部分のクラックから水が床下内に流入するとの主張が施主側よりなされた。そのため、建築構造の専門家とともに、本件建物では、基礎スラブの厚みが110个任盥渋ぢ冦肋紊琉汰汗を確保できていることを構造計算により立証し、また、基礎立上り部分のクラックについては、発生原因を特定した。結果、第一審は構造耐力上の瑕疵はない旨認定し、業者側の請求をほぼ認容した。
    施主側が控訴した控訴審においても構造耐力上の安全性は前提とされたため、一定額の値引きを行い、請求金額の全額に近い形で、和解解決を応諾した。
    業者側の施工には、設計図書記載の寸法を確保できていない点等があったことから、一定額の値引きは相当な措置であったと考えている。
  • 【建物基礎の構造上の瑕疵が争点となり基礎の再築費用相当額の損害賠償請求がなされた事案につき,構造上の瑕疵を実質的・技術的観点から判断し,瑕疵を否定した訴訟事件】第一審勝訴:確定
  •  工務店が,設計・施工した戸建て住宅について,施主側より,.戰心霑蛋暖任慮さ不足(設計図書150弌Ц酋掘畉脳142弌法き▲戰心霑奪好薀崚感擇里ぶり厚さ不足(法令60弌Ц酋掘畉脳4.7僉法きベタ基礎の鉄筋量の不足(日本建築学会基準D13@150:現況D10@200),ぅ戰心霑知上り開口部の補強筋の未施工(補強筋無し),ゥ戰心霑炭入れ深さの不足(法令12儖幣紂Ц酋沓隠悪儖焚次法きγ枠彿箒の未施工(自沈層あり)等が瑕疵として主張され,基礎の解体,再築等に関する損害賠償が請求された事案である。工務店側の被告訴訟代理人として関与した。

     一般に,建物の瑕疵や欠陥の有無を判断するにあたっては,設計図書,契約図書,建築確認申請図書などに従い建築されているか否か,建築基準法,同施行令,旧建設省告示(国土交通省告示),日本建築学会建築工事標準仕様書,住宅金融公庫融資住宅共通仕様書(旧)等,日本の建築界の通説的基準を満たしているか否かによって判断するものとされている。
     そのため,設計図書のみならず,上記のとおり,関係告示,学会基準などが,瑕疵の基準として原告側より主張され,本件では,上記基準に照らすと,未充足箇所が確かに存在することが,瑕疵の評価にどのように影響を及ぼすか,という点が問題となった。

     もっとも,本件では被告工務店は,常識的な施工方法に則り,十分な配慮を行い,施工を実施しており,また基礎の構造種別の選定にあたっては,地盤保証会社等の専門業者が承認し得る基礎を採用していた。また,保証期間も残存しており(第三者保証有り),将来,何らかの問題が生じても十分に対応できる体制と評価できた。
     そのため,上記を前提に,各法令の技術的趣旨,各技術基準の位置づけ(法令との関係)などを,第三者一級建築士の助力を得て,意見書,証人尋問等で明らかにして弁護活動を行った。
     この結果,裁判所は,単純に設計図書,法令,技術基準から形式的に判断するのではなく,訴訟で証拠として提出された各専門業者,専門家の意見等をも参考に,実質的・技術的観点から,法的評価概念である「瑕疵」を検討し,その全てにおいて瑕疵を否定した。
     上記判決は,控訴されず,第一審で確定した。
  • 【設計変更が争われ,建物の間取り等が当初契約図面とは異なるから瑕疵である等と主張されて,損害賠償請求がなされた訴訟事件】第一審・第二審勝訴:確定
  •  工務店が,設計・施工した戸建て住宅について,施主側より,「風水の関係から水廻りは北側にしてはならない(水廻りを北側にすると,夫が家に帰らなくなる等)ということを伝えていたのに,無断で設計変更され,間取り等が変更されたことから,瑕疵である」等と主張され,損害賠償が請求された事案である。工務店側の被告訴訟代理人として関与した。

     本件では,建築工事請負契約に先立って締結された施主と建設地所有者との間の不動産売買契約の段階では,対象土地に一部地役権の設定地域があったが正確な情報がなく,また地積も確定地積ではなく分筆が予定されていたこと等の事情があった。これらが整理される前段階で,建築工事請負契約が締結され,その後,地役権の正確な情報が整理され,分筆後の確定地積が明らかとなったことから,この段階で,建物について,間取り・形状等の設計変更が行われることとなった。
     もっとも,変更工事契約書等の書面が作成されなかったため,施主は,上記変更を無断変更と主張するに至り,「言った,言わない」の問題が生じて紛争が顕在化したものである。

     上記は総じて,設計変更に関する事実認定の問題である。この点については,残っていた議事録を証拠として提出し,営業マン,設計担当者,工事担当者の証人尋問を行うとともに,施主側の主張の不合理性,建築工事実務における打合せの常識的な態様などを詳細に整理して主張を行った(例えば,本件では,契約図面から「間取り・形状等の変更」を行った後に建築確認申請が行われ,さらにその後に,窓の大きさ,位置の変更などを理由とした軽微変更届が提出されていたが,経験則上,このような窓の大きさ,位置の変更を,工務店が施主に無断で行うべき理由はなく施主の希望によるものとしか考えられない→建物が上棟すらなされていない段階である以上,施主は図面をみて変更を希望したはずである→確認申請段階の図面と軽微変更段階の図面における「間取り・形状等」は一致する→確認申請段階の図面においては既に「間取り・形状等の変更」はなされていた以上,施主は変更後の間取り,形状等を当然の前提にしていたはずである等)。
     この結果,第一審裁判所は,設計変更の事実を認定し,原告側の請求を棄却した。
     その後,本件は施主側より控訴されたが,控訴審裁判所も第一審判決を維持し,施主側の控訴を棄却し,判決は確定した。
     紛争予防の観点から,設計変更などの契約事項を変更した場合には,都度,変更契約書を交わす等,客観的な資料を残しつつ,事に挑むことが如何に重要か痛感した案件である。
  • 【隣地の盛土造成工事により被害者所有の建物が不同沈下したことに基づく、隣地地権者らに対する損害賠償請求訴訟事件】一審一部勝訴:確定
  • 被害者宅隣地の地権者らが、第三者の業者に自らの所有地(田・畑)上に盛土工事を依頼したところ、この盛土工事により圧密、引き込み沈下が生じ、被害者宅が最大14.12/1000程度不同沈下した事案。問題を起こした業者は夜逃げしたため、被害者は問題のある盛土工事を依頼した地権者らを主とした相手として、(1)盛土は、土地工作物である(民法上の土地工作物責任:無過失責任)、(2)地権者らは盛土対象地が軟弱であり大量の盛土をすれば沈下等の危険が生じることを認識し得たのであるから、危険防止策を確認した上で工事を行わせるべき注意義務がある(過失責任)などを主張して賠償を求めた。被害者側の原告訴訟代理人として関与した。
    法律論からすれば、地権者らは直接盛土工事を行った当事者ではなく、盛土工事に関する専門的知識もないため、不法行為責任が認められる原則的要件である「過失」を立証するためには、大変大きな「壁」があり、また盛土工事前に、同様に軟弱地盤の上にあった被害建物のレベル関係も不明であったため、盛土工事と不同沈下との間の因果関係も争われることとなった。
    そのため、(2)のように直接的な過失を立証するか、(1)のように盛土は土地工作物であると主張し(土が土地工作物というのは理論上十分可能と考えていたが、理解され難い側面もあると思われた)、民法717条に基づく損害賠償請求をする他は方途がない状況であり、(3)因果関係については、如何にして客観的な証拠を収集できるかが大きな問題であった。
    訴訟においては、(1)につき、盛土対象地盤の状態(軟弱地盤性)、地権者らにおいて土木建築の知識はないにせよ農業と関わりを有していれば軟弱地盤の上に大量の盛土をすれば何らかの影響が生じ得ることは認識できること(豆腐の上に指をおいていただきたい。周辺も指を中心にクレーター状に凹むはずである)、当該問題業者が無料で工事を行うとの約束であったことからみれば(このようにして不法投棄をする業者は現実に多い)、有償を前提とする適正な工事が行われないおそれがあったことなどの事情を、建築土木の専門家等の力も借りて、主張、立証したところ、判決では、被告地権者らの直接的な「過失」が認められることとなった。
    また、(3)については盛土工事前の被害建物の具体的なレベル関係は当然のことであるが不明であり、被害建物も軟弱地盤上にあったため、盛土工事と被害建物の不同沈下については因果関係も争われたが、同種被害を受けた近隣の建物所有者の協力を得ることができ(精密工場であったため、レベル差には非常に敏感であった)、また、盛土工事後の一時点においてレベルを計測し、さらにその約1年後に同一の場所、方法でレベルを測定したところ、沈下傾向が進行していることが確認できたことから、判決では因果関係も肯定された。
    但し、具体的な損害額については、再建築費用までは認められず、沈下した被害者建物の時価相当額という判断であり、一部認容に止まった。同金額では、安心できる家屋に再び居住するための補修工事を実施することができない。損害の形式的な時価評価という一律の基準は、居住用建物については生存権を脅かすものとして不適切と強く感じるところであり、控訴提起を検討したが、被害者側は判決内容に納得したため、訴訟外で和解し、控訴は提起しないこととなった。
  • 【東日本大震災により,擁壁が崩落・毀損し,建物に不同沈下が生じたことによる損害賠償請求訴訟事件】第1審:全面勝訴,控訴審:遅延損害金の見直し:上告受理申立て中
  •  被害者は,平成4年に擁壁付き土地を住宅用敷地として購入し,その後に住宅を建築した。
     しかし,平成23年3月11日の東日本大震災により,擁壁は,崩落,毀損し,建物に不同沈下の障害が生じることとなった。当該地域での震度は,気象庁震度階で「5強」であった。
     この擁壁は,々發気2mを超えるにもかかわらず,工作物確認申請など所定の審査手続を経ておらず,下部に現場施工のRC擁壁・上部にプレキャスト擁壁という2段擁壁となっていたといころ,これらの上下段の擁壁は構造的に一体化しておらず,かつ,擁壁の安定計算をしたら,円弧滑り等に対する安全性が確保されていないと見受けられた。また,鉄筋量は標準的な擁壁より著しく少なく,水抜き穴等も施工されていなかった。
     上記種々の問題を受け,当初は,交渉から入ったが,相手方より無視される状態であったため,被害者側の訴訟代理人として,土地売主(会社:宅建業者,擁壁建築の事業主),当該売主法人の代表者個人(宅地建物取引主任者),擁壁の実設計・実施工業者(会社)及び当該業者の代表者個人に対して,不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。
     上記における争点は,次のとおりである。

    一 擁壁付き土地の売主(法人)に対して
     ’篌隋碧/諭砲蓮ぢ霖老物取引業者として,また,当該土地を宅地としての利用を予定した第三者に売却するべく,擁壁を築造し,土地を造成する事業主として,擁壁が高さ2mを超える以上は,建築基準法を遵守し,確認申請をして確認済み証の交付を受け,また工事完成後は完成検査を受け検査済み証の交付を受ける等,本件擁壁の適法性について所定の審査を受け,かつ,安全な土地としての効用を発揮できるよう配慮するべきであった。
    ◆,泙拭に楫鑞癖匹上記手続を履践せず,違法かつ重大な欠陥がある状態となっているにもかかわらず,本件売買契約締結に際して,被害者に対して,これらにつき全く説明しなかった。土地売買に関する専門的知識を有する宅地建物取引業者であれば,上記は当然に認識し,認識し得べき立場にあり,かつ,これらは,売買契約締結に至る意思決定に際して極めて重要な事項に該当する以上,売主(法人)は,買主である被害者に対して,信義則上,説明義務を負うのは当然である。

    二 擁壁付き土地の売主(法人)の代表者個人に対して
     ’篌隋碧/諭砲了業計画を立案,決定し,業務を執行すべき代表取締役として,宅地としての利用が予定された当該土地において擁壁を築造,造成工事をするに際しては,建築基準法等の関係法令を遵守し,適法かつ安全な物件にすることにより,売却によって所有権を取得する者及び当該土地を利用して建物を所有することとなる者らに損害が生じることがないよう配慮すべきであった。
    ◆’禺腓紡个靴峠斗彁項説明等を行う宅地建物取引主任者として,土地売買契約に際して,前記一△汎瑛諭だ睫世鮃圓Δ戮であった。

    三 擁壁施工業者(法人)に対して
     擁壁は,敷地地盤それ自体及びその上部の建物を支持する役割を担う以上,その安全性が確保されなければならないことはいうまでもなく,危険な擁壁は,敷地地盤の崩落・毀損,建物の倒壊・毀損の危険性を包蔵することとなる。
     そのため,当該擁壁の施工業者として,建築基準法等の関係法令及び技術基準を遵守し,構造的に安全な擁壁を築造しなければならないにもかかわらず,これを怠り,構造的な安全性を検討せず,法令,技術基準に全く適合しない危険な擁壁を築造し,結果,本件事故が発生した。

    四 擁壁施工業者(法人)の代表者個人に対して
     当該擁壁施工業者(法人)の代表取締役として,擁壁の設計,施工方法等を決定する立場にあった以上,擁壁の設計,施工に際しては,当該土地及び同土地上の建物の所有者,転得者等の生命,身体,財産等に危険が及ぶことがないよう,法令,技術基準に適合させるべく最大限の配慮をすべき注意義務があるというべきであるが,これらに反し,法令,技術基準に全く適合しない危険な擁壁を,当該擁壁施工業者(法人)をして,漫然と築造させた。

     上記に対して,被告ら側は,今般の事故の原因として擁壁の経年劣化があるはずであること,擁壁の築造費用が損害額の上限となるべきこと,震災に起因するものであるため,擁壁の崩落・毀損との間には相当因果関係がないこと等々と主張し,これらを争った。
     これに対して,被害者側は,擁壁の構造欠陥の技術的内容・事項を詳細に立証し(私的鑑定書,専門家証言など),また,震災起因性についても,「構造上の危険性を包蔵する擁壁の『瑕疵』が,地震により顕在化しただけである。」等という主張を展開して,これらを争った。
     これらの結果,第一審では,被害者側の請求内容(補修関係費用,慰謝料,一級建築士調査費用,遅延損害金,弁護士費用相当額の損害など)が全面的に認容される判決が下された。なお,遅延損害金の起算点は,本件擁壁が施工され,被害者側が本件擁壁を含む本件土地の所有権を取得した時点とされた。
     この第一審判決を受け,被告ら側は,高等裁判所に控訴提起を行った。
     高等裁判所では,損害金の元金は維持しつつも,遅延損害金の起算点については見直しを行った(第一審の変更)。
     上記を受け,被害者側は,遅延損害金の起算点を争い,上告受理申立てを行っており,この点については,まだ結論が確定していない。 
  • 【リフォーム住宅の施工瑕疵に基づき,請負代金の支払いを拒絶された請負残代金請求訴訟事件】第一審全面勝訴・控訴審勝訴:確定
  •  業者がリフォーム工事を実施したところ,工事終盤で,施主と連絡が取れなくなり,また連絡が取れても,瑕疵などを主張され,請負残代金・追加変更工事代金の支払が拒絶された事案である。
     業者側代理人として,施主に対して,内容証明郵便による請求を行うことから開始したが,施主は,当方の書面の受領は拒絶しつつ,反対に,瑕疵があるから代金は支払わないという書面を一方的に送付してくるという異常事態となったため,やむなく訴訟を提起した。
     本件における争点は,当方が請求している項目が,…媛段儿更事に該当するか(当初契約内か否か),追加変更工事に該当するとして,請求金額が相当か,施主が主張する瑕疵の有無である。
     本裁判では,裁判所は,一級建築士専門家を関与させ,審理を継続したが,同専門家は,瑕疵に関しては,正当にも業者側の意見を取り入れたが,追加変更工事代金請求については,厳しい見方をし,業者側が負担すべき項目もあるとの意見を示した。
     例えば,.ロス工事においては,開口部を除外して費用を算出すべき,当初見積では布基礎新設箇所をm単価で数量を積算しているにもかかわらず,後から追加で行ったm部分も,本来行うべきといえる箇所であれば追加部分についても半額は業者側が負担した方がよいなどといった具合である。
     また,雨樋の勾配が緩く水が溜まっている状態をリフォーム工事の対象としなかった点については,施主側が,費用面から当該箇所の雨樋の交換を拒絶したにもかかわらず,業者側が直すべきなどという有様であった。
     同専門家は,本件を巡る事実関係,及び「リフォーム工事」の特質を理解できていないと感じざるを得なかったことから,当方は,上記専門家の意見に反論し,当初契約の内容の特定(図示)→追加変更の内容(図示)→追加変更工事に於ける相当な単価・工事費積算方法等に関し,逐一立証を行った。
     結果,第一審判決では,追加変更工事代金額は,全額認容,瑕疵はない,と全面勝訴判決となった。この後,施主側より控訴され,控訴審での審理となった。
     控訴審の判決では追加変更工事代金額は若干削られたが,瑕疵の否定は維持され,ほぼ業者側の請求は認められ,勝訴判決にて確定した。
     この後,請負残代金の回収を図るべく不動産競売申立の準備に直ちに着手したが,途中にて,判決確定後年利14.6%の遅延損害金を含め,控訴審認容額全額を施主が支払ったため,無事全額回収できた案件である。
  • 【地下立体駐車場内が降雨の際に水没し,車両が毀損されたとして,損害賠償請求がなされた事案】第一審判決全面勝訴:確定
  •  本事案は,首都圏の集中豪雨の際に,地下立体駐車場が浸水し,駐車車両が水没した事故に関し,被害者に保険金を支払った保険会社が,当該地下立体駐車場の所有者及び賃貸人(サブリース)=当該地下立体駐車場の設計,施工者に対して,損害賠償を請求した事案である。所有者及び賃貸人=当該地下立体駐車場の設計,施工者側の被告訴訟代理人として訴訟を追行した。
     上記事案では,原告保険会社側は,1)地下立体駐車場が浸水したのは,雨水排水処理設備(ポンプ)が機能していなかったことによるものであり,設計ないしメンテナンスに瑕疵がある,2)仮に地下駐車場に設計ないしメンテナンス上の瑕疵がなかったとしても,賃貸人は,地下立体駐車場が浸水することをも予見して管理すべき注意義務があるなどと主張して,土地工作物責任,債務不履行責任等を主張した。
     本件事案における最大の争点は,「なぜ,地下立体駐車場が浸水したのか」という点にあった。

     上記に関し,当方は,〇故当時は集中豪雨で,雨水量が膨大であった,∨楫鐫浪捨体駐車場の雨水排水は,地下駐車場に流入した雨水をポンプで引き上げて,当該地下立体駐車場の前面道路のU字溝に排水するシステムが採用されたところ,前面道路が冠水したため,排水処理ができなくなったにすぎない。U字溝の管理権限は,市にあり被告ではないので,被告の法的責任の範疇に属する事項ではない旨,主張して争った。
     もっとも,,砲弔い討蓮せ圓原告側の補助参加人として訴訟に関与し,当時はそれほどの降雨量ではなかった旨主張し始め,△亡悗靴討蓮つ樟棔ち位牝始の冠水を基礎づける写真等の証拠はなかった(目撃者もなし)。
     そこで,当方は,車両の浸水深さに着目し,「当該車両が●センチ水没するためには,●●ミリの降雨量が必要である→しかし,過去の関東地区最大の降雨量を前提としたとしても,地下立体駐車場自体に降り注ぐ雨のみでは当該車両は●センチも浸水し得ない→そうすると,当該地下立体駐車場の外部から雨水が流入しなければ,本件水没事故は生じ得ず,その原因としては,前面道路のU字溝が冠水して,地下立体駐車場の上部から,地下駐車場内に雨水が流入したとしか,物理的に考えることはできない」ことを,降雨量計算を綿密に行い,立証した。

     本件では直接的な証拠はなかったが,裁判所は,当方の主張を採用し,本件水没事故は,前面道路が冠水したことにより生じたものであると認定して,前面道路U字溝の管理権限のない当方の責任を全面的に否定した。結果,前記争点1)記載の原告の主張は退けられた。
     なお,前記争点2)に関しては,市が管理する公共物たる前面道路のU字溝に排水機能がないことを前提に設計,管理することはできず,予見可能性はないと主張したところ,裁判所は同主張を採用した。
     建築物の浸水事故等に関しては,専門業者には高度な注意義務が課され,また,本件では前面道路の冠水を基礎づける直接的な証拠はなかったが,科学的,物理的見地から正当な分析結果が,技術訴訟においては必要不可欠であることが実感できた事案といえる。
  • 【シックハウス症候群に罹患したことを理由とする損害賠償請求訴訟事件】第一審和解
  • 住宅のリフォーム工事を依頼した被害者家族が、リフォーム工事中・入居直後に異臭を感じ、体調を崩し、うち大学受験を控えた子が、シックハウス症候群(その後パニック障害を併発)と診断された事案(後に両親もシックハウス症候群と確定診断)。当該建物では、ホルムアルデヒド、トルエンが、厚生労働省が策定した指針値を超過する状態であり、これらの室内空気汚染が原因となり、一時期、子は緊急入院を余儀なくされるほど重篤な状態となって、最終的に大学受験を諦めざるを得なかった。そこで、業者側の起こした請負代金請求訴訟につき、被害者側の訴訟代理人に就任するとともに、本件工事の結果、シックハウス症候群に罹患した事実等に基づき、損害賠償請求訴訟を別訴提起し、併合審理が行われることとなった。
    数年間の審理の中で、一級建築士、室内空気質の専門家、化学者、医師らと連携し、専門家の鑑定書的性質を有する書面等を複数提出した。また、室内空気質の専門家の証人尋問、原告・被告本人尋問も行われた。いざ結審という段階で、裁判所より、突如、和解の勧告がなされ、裁判所が本件事案の深刻さを適切に理解していることが確認できたため、同勧告に従い、請負代金額の大幅減額で、和解解決をした。当該建物のシックハウス性については、裁判所側においても建築の専門家、室内空気質研究の第一人者等を動員し、現地見分を行い、因果関係等を含め、専門的な事項についても議論が尽くされた。
  • 【化学物質過敏症に罹患した施主が,健康な住宅であることを絶対の条件として,請負契約を締結したところ,室内空気汚染が発生した事案】第一審一部勝訴・控訴審一部勝訴:確定
  •  本件事案の概要は次のとおりである。
     化学物質過敏症に罹患した施主が,人体に有害な化学物質を使用せずに健康な住宅を建築することができるとの業者の言葉を信頼して請負契約を締結したのであるが,それにもかかわらず,現実には化学物質を多量に含有する塗布剤,接着剤等が使用され,結果,室内空気汚染が生じた。そこで,施主において,シックハウスを含む,他の建築瑕疵等を理由に,業者側の請負残代金・追加変更工事代金の支払を拒絶したところ,業者側より訴訟が提起されたことから,反対に,施主も業者及び同業者の代表者に対して損害賠償請求を行った事案である。
     上記につき,施主側の訴訟代理人として関与した。

     本件において最も大きな争点は,ー柴盒気汚染(健康住宅を依頼したにもかかわらず,厚生労働省の策定した室内濃度指針値を超過する室内空気汚染が生じたこと)と構造上の瑕疵(耐力壁の仕様となっていないこと)であった(もっとも,その他の瑕疵該当性,追加変更工事該当性も一項目毎に争点を形成しているのは当然である。)。

     争点,砲弔い討蓮ず枷十蠅蓮ぁ嵋楫鏃物のために選択され使用された塗料や接着剤が,当時のシックハウスに関する基準や規制に反するものであることを認めるに足りる証拠はなく,原告らが当時専門的知識を活用し,被告●●に臭いを嗅いでもらう等の方法も併用しながら,化学物質過敏症を防止すべく配慮をした経過が窺われる。しかし,本件建物の請負契約で,被告●●の化学物質過敏症に伴うシックハウス対策が特に重視されていたことに照らせば,化学物質を含んだ塗料や接着剤が相当量使用されている点で,その配慮が十分であったとは認められない。そのため本件建物では,後記(26)(換気設備)の不足を主な原因として,前記(16)(木製建具)からの化学物質の発散と相まって,基準値を超える室内空気汚染を生じたさせたことが認められる」と認定して,瑕疵と評価したが,具体的な損害額は,建て替えまでは不要であることを前提に,「被告らの生活の場である自宅に上記瑕疵が生じ,本件特有の請負契約の趣旨に沿わないことに鑑みれば,本件建物それ自体に応分の減価は免れず,その金額は,建築代金の約1割」としか認定しなかった。
     争点△砲弔い討蓮ざ伴圓建築基準法上の仕様規定に違反した壁を施工したので(耐力壁としての性能がないことになる),仕様規定違反=瑕疵である旨,主張したところ,業者側からは,「限界耐力計算を実施したところ,安全性は確認された」との反論がなされた。
     この点については,業者側の限界耐力計算の前提とされた実験が,本件建物の仕様とは異なること,また,応力の分析・検討が不十分と言わざるを得なかったこと等から,これらを詳細に反論したところ,裁判所は,業者側の主張を一切採用せず,仕様規定違反を前提に瑕疵を認定し,補修工事相当額を損害と認定した。
     しかし,裁判所は,当方の主張を全面的に採用したわけではなく,瑕疵ではないと判断した項目もあり,追加変更工事代金も半額以上認めた。

       双方が控訴し控訴審では和解解決の可否について協議が行われたが決裂し,判決が言い渡されることとなった。控訴審の判決でも瑕疵についての認定は第一審を維持し,損害額の評価も基本的に第一審判決と同旨であったが,遅延損害金の法的評価については当方の主張を採用した結果,第一審判決より結論は好転した。

     化学物質過敏症に関しては未解明な事柄が多く,本質的・根本的解決が難しい。判決で勝訴をしたからといって,施主が安全に住めるという関係にないからである。医療の進歩により,医学的に根治できる手法が早急に見つかることが切望されるところである。
  • 【建築瑕疵を理由とする建替費用相当額の損害賠償請求訴訟事件】第一審一部勝訴:確定
  • 建築確認申請をRC3階建てで申請した一方、現実には4階建てとなる仕様で建築された建物につき、摩擦杭の仕様、壁厚さ等が3階建ての仕様のままであったため、構造耐力上危険であること、各種建築基準法違反があること、雨漏りがすること、仕上げ精度が不良であることなどが、施主より瑕疵として主張され、建替費用相当額等として3390万5233円もの損害賠償請求がなされた事案。
    業者側の被告訴訟代理人として、訴訟を追行した。
    上記事件では、構造耐力上の安全性に関わる事項については建築構造の専門家、構造以外の事項については経験豊かな第三者一級建築士のご協力をいただいた。中でも、最大の争点は構造耐力上の安全性であったため、検討の前提となる固定荷重、応力の分散の状況、具体的な場所毎にかかる応力の種類、抵抗性能値等の分析を行いつつ、構造耐力上安全である旨、具体的に主張・立証した。結果、判決においても、構造に関わる瑕疵については、全て存在しない旨の判断が示され、原告側の請求は棄却された。
    但し、石張りの精度、雨水の浸入等の一部については瑕疵が認められたため、3390万5233円の請求のうち、251万5478円分については一部認容されることとなった。欠陥住宅訴訟における構造上の瑕疵に関しては、構造計算を綿密に行い完璧に立証できることが重要であることを再認識させられた案件であった。
  • 【建築工事の現場で,足場事故が発生し負傷した作業員が,元請負業者に対して損害賠償を請求した訴訟事件】第一審一部勝訴・一部敗訴,控訴審和解
  •  建築工事現場で,元請負人が手配した大工が,足場板の一部を外して作業をしていたため,孫請け業者が手配した設備業者が,その足場部分を通った際,足場から落下して負傷した。
     同事案に関し,受傷した作業員は,元請負人業者に対して,民法第715条の使用者責任に基づき損害賠償を請求した事案であり,元請け=被告側代理人として訴訟を追行した。
     当該作業員は休業損害,逸失利益等を請求しており,請求金額は2400万円を超える金額となった(足関節に後遺障害が生じたとのことであった)。
     上記事件では,当該作業員が,足場昇降の安全のための設備である足場用階段を使わなかった点(足場用階段を使用すれば,大工が足場板を外した場所の足場を使用する必要性は全く無かった),一人親方の特別労災加入が指導されていたにもかかわらず,当該作業員は特別労災に加入しておらず,その結果,損害が拡大した点(労災保険が下りない),当該作業員は確定申告時において赤字申告をしており,そのため,当該作業員の休業損害算定の基礎となる年収が不明である点などが問題となった。 
     なお,当該大工は,本件に関し,業務上過失致傷罪で刑事告訴され,略式命令により罰金刑に処されている。
     元請け業者は,自らの現場の安全措置を講じる義務がある者であることから,関係裁判例による限り,指揮監督関係,実質的な使用関係が認められる場合には,現場での事故に関し,民法第715条の使用者責任が成立することが多い(あとは過失相殺の問題となる)。
     そのため,本件では,前述した問題点を前提に,双方の攻撃防御活動が行われた。
     同事案においては,仝従貍況の再現写真の作成(解説文付),他に当該事故現場の工事に携わった者に対するアンケートの実施(足場用階段の設置の有無,箇所,使用の有無等について)等を整理し,裁判所に理解できる形での客観的な立証を行うとともに,足場を外した大工本人,受傷した作業員,元請の担当者の尋問手続を行った。
     第一審判決では,過失割合が3(被害者たる設備業者):7(大工)と認定され,一部勝訴,一部敗訴の結果となり,双方が控訴提起し,高等裁判所の和解の斡旋により,和解解決した。
     現場を統括する元請業者には,高度な現場の安全措置を講じる義務が課されることを痛感させられた案件である。
  • 【下請業者が行った解体工事の振動により近隣建物に発生した亀裂等の損害を,事業主が被害者に賠償した上で,当該下請業者に対して,被害者に賠償した金額を損害として賠償請求した訴訟事件】第一審全面勝訴・控訴審勝訴的和解
  •  新規店舗出店を企図した事業主が,出店予定地上に存在した旧建物を解体した上で新規店舗を建築する計画を立て,まずはA業者に解体工事を依頼した。A業者は,請け負った解体工事を,解体専門業者であるBに委ねた。同解体工事の現場は軟弱地盤であり,かつ,旧建物敷地のアスファルト舗装が400弌滷柿悗△辰燭,Bは,バックホウ等を用い,特段,これらに配慮することなく,解体工事を実施した。この解体工事によって,甚大な振動が発生し,現場近隣の建物2棟の壁などに亀裂が発生するなどした。この事故に関し,Bの担当者が自社の加入している工事保険で損害が填補される旨説明をしたことから,事業主は,被害者らと交渉し,最終的に示談を成立させ支払いを行ったが,この後,今回の事故は工事保険の免責の対象であることが判明した。すると,Bは,突然,「工事保険で支払うなどと説明した事実はない」と主張し始め,事業主が支払った示談金の支払いを拒絶するに至った。
     本事案は,事業主において調停申立てを行い,協議による解決を図ったが,Bがこれをも拒否したため,事業主において,やむを得ず,Bに対して損害賠償請求した事案であり,事業主原告側訴訟代理人として訴訟を追行した。
     上記事案では,
    Bの行った解体工事により,近隣建物に被害が発生したといえるのか。
    Bの担当者において,Bが示談金を負担することを前提に,Bの加入していた工事保険が適用される旨説明した事実があるのか否か。
    損害額の相当性といった点が問題となった。
     まず,,砲弔い討蓮げ鯊旅事前の家屋調査の写真・映像と解体工事後の家屋調査の写真・映像との比較によって,立証することが理想である。これができなければ,新築建物でもない限り,解体工事前の状況が不明と反論されることが容易に想定される。もっとも,本件では,解体工事前の家屋調査が行われておらず,上記比較ができなかったため,「当該被害建物に生じた亀裂等が解体工事によって生じたものといえるのか(元々発生していたものではないか)」という点が問題となった。
     上記については,
    1)工事振動のメカニズム,重機が発生させる振動レベルの推定,解体工事現場における「あるべき」振動抑制措置等に関する第三者専門家の意見書(「解体工事用の重機の振動で,近隣建物に●dB程度の振動が伝達し得る」「そのため,解体業者としては,振動抑制措置として,●●をすべきである。しかし,現場では●●はされていなかった」という点を明らかにするものである。)
    2)当職らが行った弁護士会照会(質問書)に対する被害者らの回答書(建物の原状の状態を最も把握している被害者側において,解体工事の振動がすさまじく,解体工事後に亀裂等が発生した事実などが指摘された。)
    3)解体工事の現場を現認した新築工事請負工事会社担当者(第三者)の目撃証言,事業主側担当者の目撃証言(工事の状況や,被害建物を訪問した際の亀裂の状態等を明らかにする)などによって,立証を行った。
     また,△砲弔い討蓮と鏗下圓箸亮談交渉の過程において,Bの担当者は,事業主側と度重なる打合せをし,そこでは工事保険が適用されると明言していたにもかかわらず,免責条項の関係で工事保険が適用されないと判明するや,交渉の窓口からフェイドアウトし,B側は会社として,むしろ「工事保険は適用されないと説明した」などと突然主張するに至った経緯があった(この態度は訴訟でも維持された)。事業主とBとの間で示談金の負担に関する合意書が取り交わされていれば,かような問題を生じないが,このような書面を取り交わしていなかったため,訴訟では「言った,言わない」の争いとなった。この「言った」という点については,事業主側で立証する必要がある事項である。
     上記については,
    1)示談交渉過程において打ち合わせに参加した新築工事請負工事会社担当者の証言,事業主担当者の証言(B担当者の説明の状況を明らかにするもの)
    2)時系列の整理(例えば,工事保険の適用に関し,「説明をした,していない」のやり取りがあった後に,事業主側担当者が「休業損害は工事保険の対象に含まれるのか」とB担当者に質問をした事実は,両担当者の証言で共通していた。時間の流れから考えると,そもそも「工事保険が適用されない」と説明を受けていた者が,その後に,「休業損害が,工事保険でカバーされるのか」という質問をわざわざするはずはない等々の事実関係の積み上げ)ということなどによって,立証を行った。
     さらに,については,B側より,元々,被害建物に亀裂が生じていた可能性があるところ,示談金の中にはこれらの補修工事費用をも含まれているのではないかとの反論がなされたが,これに対しては,亀裂発生箇所のみ部分的に直しても,補修跡が目立ち,「意匠面」が回復しない,そのため,一定程度広範囲を補修(塗装等)する必要があり,元々一定の疵があったとしても費用的には変わらない,そのため,全て損害として認められるべきであると反論した。
     直接証拠に乏しい案件であり,解体工事前の家屋調査写真,示談金の支払いに関する合意書面等,王道ともいうべき証拠が存しない状態であったが,上記により逐一様々な事実を積み重ねた結果,第一審判決は,事業主側の主張を認め,全面勝訴した。
     現在,B側より控訴提起がなされたが,第一審判決を前提に勝訴的な和解をして和解金を回収した。 
  • 【建築条件付き土地売買契約における買主・施主が,売主・請負業者側の契約解除の主張を争い,契約の存続確認及び1日につき3万円もの損害賠償請求を求めた訴訟事件】第一審勝訴:確定
  •  建築条件付き土地を購入した買主が,住宅ローンを利用した土地代金の決済を行うことなく,建築工事に関し,理由のないクレームを主張し始め,建築途中の建物を建て替えるよう主張するに至ったため,売主は,土地売買契約及び建築工事請負契約を解除した。しかし,買主は納得しなかったことから,平成18年に調停手続が行われたが,協議は決裂し,不調に終わった。今般の事案では,買主は,解除を承認しないだけではなく,建築途中の建物を解体撤去し,当該土地を更地にした上で,さらに売主所有の隣地をも極めて低廉な価格で自らに売るように強弁していた。これは,実質的には,建築工事途中の建物代金は一円も支払わない,途中建物は業者側で取り壊せ,土地は2筆を1筆分で売り渡せということであったため,このような提案では当該売主側には数千万円の損害が発生する。当然業者側においてこのような提案を応諾することは出来ず,契約解除の主張を堅持した。
     買主は,‥效惑簀齋戚鶺擇喟蘇薹戚鵑詫効に存続していることの確認及び土地建物の引渡まで1日3万円もの金員の支払い(3年以上経過していたため,莫大な金額となる)を求めて訴訟を提起した。上記事件に関し,被告売主・業者側の訴訟代理人として関与した。
     上記における土地売買契約おいては,一定の期限までローン承認ができなかった場合の自動解約条項が存在したことから,契約上は本来であれば自動解約条項(ローン条項)が発動できる時期が到来したならば,一方的に打ち切って良かったのであるが,売主・業者側は,業者としての好意から,その後も,建築工事に関し買主側と打ち合わせを行い,工事を継続していた事実があった。そのため,自動解約のみで解除構成をとると,この好意が逆手に取られ,「その後,契約を継続することを前提とした行為を行っているのであるから,自動解約は使わないという合意が成立している」と主張され不利な状況で防御活動を行わざるを得なくなることが予想された。他方で,訴訟の過程において,ローン手続を行うべき義務を買主は負担していたにもかかわらず,実は,一旦申請をした後にローンを取り下げ放置していた事実も判明した。但し,手続上,「履行するよう催告」が必要となるところ,同催告は,担当者の口頭で実施したとの証言しか証拠がなく,書面が存在しない状態であった。加えて,当該訴訟では,当該建物には看過し難い瑕疵があり,当方の解除権行使は,同瑕疵を指摘したことに起因するものである以上(本来同事実はないが),当方の契約解除が権利濫用であるという趣旨の主張も展開された。
     これらの種々の事情を考慮し,上記裁判では,ー動解約条項の援用,▲蹇璽鷦蠡概遡海鯢堙に怠っておきながら,その隠し,ローン手続中であるかのごとく装っていた点を捉え,債務不履行解除,E該請負契約約款の特則に基づく解除という構成を立てて(受領済みの金員の倍返しで解除できる特約),解除権行使の正当性を主張した。

     建築瑕疵も争点として取り上げられたことから,一級建築士の協力を得ながら反論しつつ,上記主張を展開し,証人尋問,本人尋問を経て判決ということとなった。
     判決では,´△旅柔は採用されなかったが,相手方の瑕疵の主張は論破でき,が認められ,当方勝訴で判決は無事確定した。事実関係が錯綜し,双方の対立が激しい事件であったが,相手方の提出する陳述書,供述では,売主に対する誹謗中傷,虚偽の事実が繰り返された経緯があり,他方で,当方は,それらに対し,客観的な知見,証拠により論破できた。
     これらも相手方の権利濫用の主張を排斥できた勝因と思われる。

     なお,´△旅柔が判決で採用されなかったのは,事実認定が,言った言わないの問題に帰着したことが原因である。裁判所の業者に対する要求水準は高いため,必要な事項に関してはきちんと書面化していなければ,裁判所より認定してもらえないことが多い。本件に即して云えば,例えば,ローン条項による自動解約期間が到来したにもかかわらず,特に,自動解約をせずに,工事を続行するのであれば,好意を逆手に取られることがないように,その段階で直ちに「●●までは延長する。但し,●●までに・・・をしなかった場合には,約款第●条による自動解約とする」と云う趣旨の合意を都度,別途,取り交わす,債務不履行解除の要件として約款上「催告」が必要であれば,内容証明郵便にて「催告書」を送付するといった,措置が必要ということである。
  • 【交通事故により,被害者の脚に,知覚鈍麻,瘢痕等の後遺障害が残ったため,後遺障害逸失利益等の損害を賠償請求した訴訟事件】第一審和解
  •  加害者の車両が,路外施設へ向かい右折進行するに際して,加害者の安全確認不十分により,反対側道路から直進してきた被害者の原動機付き自転車と衝突し,これによって,被害者には,脚の骨折等に起因する後遺障害として,脚の膝外側部に知覚鈍麻(自賠責後遺障害等級14級),下肢に瘢痕(自賠責後遺障害14級)が残存するなどの事態が生じた(併合14級)。
     任意の交渉段階では,保険会社側は示談金「残金」として,当初『220万円余(他に,治療費等の既払い金は約370万円)』を提示してきたが,双方折り合いがつかなかったため,被害者側の訴訟代理人として,訴訟を提起した。
     上記訴訟では,法的論点として,次の事項が争点となった。
    一 被害者の後遺障害として認定された「知覚鈍麻」は,神経症状にすぎず,労働への影響が乏しいことから(時間の経過や慣れなどにより症状が消失していくことが前提),逸失利益の期間は5年程度が相当ではないか(また瘢痕については労働能力に直結せず,逸失利益を別途認める必要はないのではないか)
    二 被害者の事故時の収入は,賃金センサスの基準と比較すると,低廉な金額であったことから,何をもって逸失利益算定の基礎収入とすべきか。
    三 過失割合(被害者側の前方不注視等)
     最も大きな争いの対象となった一については,次のような経緯を経ることとなった。

     “鏗下圓慮絨箴祿欧箸靴毒定された事項は,「知覚鈍麻」と「瘢痕」のみであったが,手術により,被害者の受傷脚は,健側と比較して,屈曲時の可動域が10度程度制限される状態であった。また,知覚鈍麻については,単なる痛みにとどまらず,重心移動に耐えられず,「踏ん張り」が効かず,生活上支障が生じる状態であり,また,骨折後の骨の不整・変形治癒により関節液が貯留することなどもあり,これにより受傷脚を動かすことが困難な状態に陥ることがあるなどの事情が存在した。
    ◆,修里燭瓠ち幣拊罎任呂△辰燭,自賠責の認定に対して,異議申し立てを行った。
      この際には,日常生活上の不便,被害者の苦痛などを具体的に整理するとともに,医師より医学的な知見をご教示いただき,「受傷脚は,骨折部位の変形治癒という器質的な変形に起因し,実質的な機能障害を伴う状態である」等々を訴えた。すなわち,知覚鈍麻という日本語に拘泥すべきではなく,被害の実態である1)苦痛・不便は,関節の器質的変形に由来するものであり,客観的に身体の一部に変状が生じていることを理解すべきであること,2)そうである以上,このことに起因する被害者の症状は回復していくことは考えられず,むしろ加齢とともに,悪化していくものとしか評価できないこと(老齢による関節痛などを想起していただきたい),3)現実に現段階でもこれだけの苦痛,不便を強いられている以上,悪化の際には,就労はおろか日常生活にも甚大な支障を生じることが明らかであるということなどである。
     上記の結果,自賠責の事前認定は覆り,「知覚鈍麻」は,後遺障害等級14級から,12級に格上げされることとなった。そのため,これを受け,訴えを拡張(請求金額の増加)することとなった。

     このような過程を経て,逸失利益については,後遺障害等級の格上げにより,労働能力喪失率の評価と喪失期間の評価について,被告側でも見直しを余儀なくされ,裁判所から和解案が提案されるに至った。
     この裁判所提示に係る和解案は,一については,12級の後遺障害等級を前提とした労働能力喪失率と労働能力喪失期間(但し,期間については神経症状という観点から一部は制限)を前提,二については,事故前の現実収入(低額)および賃金センサス男子学歴計(全平均)のいずれでもなく,学歴に応じた平均賃金を基準(事故時の実収入よりは多額),三については折衷的な過失割合(原告=0:10〜1:9と主張,被告=3:7と主張していたことに対して,1.5:8.5)を前提としたものであり,これらをふまえ『1300万円余(他に,治療費等の既払い金は約370万円)』(保険会社の当初提示額の約6倍)というものであった。
     和解解決として相応の金額であったが,被害者にとっては一生の問題である。
     そのため,当方の主張が受け容れられなかった部分については,再交渉をし,最終的には,『1350万円(他に,治療費等の既払い金は約370万円)』で,被害者の納得のもと,和解成立という運びとなった。

     今回の裁判では,自賠責の事前認定に対して異議申立てを行い,自賠責で当方の主張が入れられ,後遺障害等級が格上げされたという点が,審理に最も影響を与えたものと考えている。この異議申立て等の準備や訴訟上の医学的な主張の際には,ご協力いただいた医師のご経験・知見が大変貴重であり,かつ,決定的であった。
     とかく,後遺障害等級14級や12級の場合における「神経症状」に関する後遺障害などは,労働能力喪失期間などの点で,被告側より争われやすく,短期の労働能力喪失期間しか認めない裁判例も散見されるところである。
     当然のことであるが,『個別具体的な事案に応じ,被害者の苦痛,不便を,医学的知見を背景に基礎付ける』べく,事情聴取,専門的知見の収集を怠ってはなるまい。
  • 【交通事故により被害者に脊柱の変形障害,瞼の線状痕の後遺障害が残ったため,後遺障害逸失利益等の損害を賠償請求した訴訟事件】第一審和解
  •  加害者の信号無視などにより,加害者の車両が被害者の車両と衝突し,加害車両は横転,被害車両は前部が破壊という交通事故が発生し,これによって,被害者には,脊柱の変形障害(自賠責後遺障害等級11級),瞼の線状痕(自賠責後遺障害等級12級)の後遺障害(併合10級)などが生じた。
     保険会社側は示談金「残金」として当初『560万円余(他に,既払い金は470万円余)』を提示してきたが,双方折り合いがつかなかったため,被害者側の訴訟代理人として,訴訟を提起した。
     交通事故案件では,財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部の「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」などの算出式により,逸失利益等の損害の算出方法がある程度類型化されている。
     もっとも,個々の事案に応じて,様々な主張がなされ争われるケースがあり,損害額については熾烈な対立が顕在化することも多い。
     本件においても,例えば,^鐚才益の算定に関して,(1)被害者が高齢であり,事故前は賃金センサスの平均賃金より低い収入しかなかったため,「実際の減収の存否」という観点からみれば,現実の事故前の収入を上回る賃金センサスの平均賃金を逸失利益の算定基礎として用いるべきではない(当方の主張は賃金センサスの平均賃金を基礎に逸失利益を計算),(2)外貌醜状については労働能力に対して直接の影響を与えるものではない,(3)脊柱変形についても具体的な症状が背部痛にとどまる程度であれば,当初は20%程度の労働能力喪失が認められるとしても,その後は低減することから14%程度とみればよい,休業損害の算定に関しても,100%全額ではなく,急性期を経て徐々に緩解するのであるから,それを反映し,一定の限度に留めるべきである等々との反論を受けることとなった。
     本件では,医師の助言を得て,医学面からの反論を構築するとともに,依頼者である被害者より日常や業務時の障害などを詳細に聴取し,主張,立証を行った結果,裁判所より,和解案が示されることとなった。
     この結果,裁判所からは『1250万円余(他に,既払い金は470万円余)』での和解金額の提示があり,当該和解案に至った過程も当方の主張を相当程度斟酌されたものであったことが確認できたため,被害者の納得のもと,これを受諾し,和解成立という運びとなった。
     交通事故訴訟は事例の集積により損害額の算定基準,過失相殺の基準などはある程度は類型化されているが,個々の事件・紛争には個々問題となり得る事柄があるのであり,一つ一つの詳細な反論,立証の大切さを改めて痛感した事件である。
  • 【賃借人のルームシェア人に対する建物明渡し請求訴訟事件】第一審・第二審全部勝訴:確定
  • 賃借人が、賃貸人から借りていた一軒家の2階部分をルームシェアとして間貸ししていた物件につき(賃貸借契約では、「同居人」という扱いであった)、賃借人が賃貸人に対して賃貸借契約の解約申入れをした後においても、ルームシェアをしていた者が占拠を継続したため、賃貸人において、同人に対して明渡し等を求めた事案。賃貸人側の訴訟代理人として、建物明渡し請求及び賃料相当損害金の支払いを求めて提訴した。 
    上記に関し、賃借人と占拠者との間には、賃貸借契約上の賃料の半分を相互に負担するとの内部的な合意があり、賃貸人において、本件賃貸借契約締結時に、賃借人の同居人として占拠者の入居を認めていた経緯があったため、承諾転貸か否かも争点となった。
    第一審全部勝訴、占拠者側控訴提起。
    高等裁判所は、(1)転貸借契約の内容も明らかではない状況であり、占拠者は、賃借人から独立した占有を有しないこと、(2)仮に賃借人から独立した占有を持ち、転貸借契約が成立していたとしても、賃貸人は、単に賃借人のみと契約をしており、占拠者は「同居人」という程度の認識しかしていなかったことから、「転貸借をあらかじめ承諾していた」とは認め難いとの判断を示し、占拠者の控訴を棄却した。承諾転貸借と認定された場合には、転借権を対抗(賃貸借契約の終了が否定)される可能性もゼロではなかった。
    ルームシェアに関するリーディングケースは見当たらないが、今後、どのような要件を満たしていれば、ルームシェアが「承諾転貸借」となるのかという法律論は問題となり得るものと思われる。
    なお、本件は、占拠者において任意に退去しなかったため、警察官立ち会いのもと明渡しの強制執行まで行わざるを得なかった事案であり、この執行の適法性についても争われた。
    占拠者側は最高裁に上訴したが、同上訴はいずれも認められなかった。
  • 【フランチャイザーが,フランチャイジーの倒産により客が被った損害の賠償を,客より請求された訴訟事件】第一審,第二審全部勝訴(確定)
  •  ある住宅フランチャイズにおいて構築・運用されている「住宅完成保証制度」を,フランチャイジーが利用せずに施主と請負契約を締結し,同フランチャイジーにおいて,前払い金として施主より約1400万円余りの代金を受領した。しかし,同フランチャイジーはその後に実質破綻したため,工事が実施できない状態となった。そこで施主は,当該実質破綻したフランチャイジーのみならず,フランチャイザーに対しても,前払いにてフランチャイジーに対して既に支払った1400万円の損害を被ったと主張して損害賠償を請求した事案。フランチャイザー側の被告訴訟代理人として関与した。
     施主側は,全件につき住宅完成保証制度が適用されないことなどを批判し,概要,そのような不完全な制度であるにもかかわらず,住宅完成保証を売りに,広告,宣伝を行ったため,施主において信頼し,当該フランチャイジーと契約を締結した結果,損害を被ったのであるから,制度運営主体としてフランチャイザーにも法的責任がある旨,主張したが,第一審は全部棄却した。
     施主側は,控訴を提起したが,控訴審は第一審判決の結論を維持し,施主側の控訴を棄却して,判決は勝訴のまま確定した。

     なお,フランチャイズシステムに関しては,フランチャイザーがフランチャイジーに屋号,商号の一部の使用を承諾し,事業活動が密接である関係上,〔照賃澆寮嫻ぁき¬泳‐紊了藩兌埓嫻い覆匹併せて追及されることが往々にしてある。
     例えば,コンビニエンスストア業界におけるフランチャイズ契約においては、フランチャイザーは、,砲弔い討い┐弌て碓豌姐罎鯏一的に使用させ,また,△砲弔い討い┐弌ぃ院飽貳姪に、小売業の素人に対し、販売・売上予測や事業資金計画などを説明して、勧誘した上で、フランチャイズ契約を締結する、2)店舗の名称(当該フランチャイザーの名称のみの使用。別の法人格の徴表を許さない)、内外装の仕様、販売製品、従業員のユニフォーム等、経営に関わる全事項を全店舗において完全に統一して指示した上、経営させる、3)さらにフランチャイズ契約継続中は、例えば、統一した製品であるレジスターを店舗に据え付け、商品の発注、仕入れ、検品、顧客情報など小売店の「営業に関わる全ての情報」を把握し、それらのデータを集積し、整理した上、店舗経営・販売促進等のために様々な指導(商品の設置位置につき棚の上、中、下の指定、設置面積の指定、顧客心理、品質管理、売上額(量)とスペースとの関係等)を行い、日常的に指導、監督する等、フランチャイザーは、フランチャイジーの経営する店舗の経営全般に対し、直接的な指揮監督を日常的に及ぼすことが多い。この点を強調すれば,´△遼‥責任を肯定する方向に作用することになろう。
     他方で,本件のような住宅業界におけるフランチャイズでは,フランチャイジーは、,亡悗靴討蓮せ藩兢蟻されたフランチャイザーの商号の一部ないし屋号を前提としつつ,請負契約書等において,自らの独立した屋号,商号を併記し,フランチャイザーとは別人格であることを明確に示し,また,△亡悗靴討蓮っ肋譴如⊇樵依茵経営を行う工務店であることが多いため、フランチャイズ契約後も、自らの商号を前提に、従前の工法、工事をも実施し、それに加えて、フランチャイザーの販売、企画する建築物を請け負うことが多い。
     そのため,コンビニエンスストアのフランチャイズなどよりは,さらに〔照賃澆寮嫻ぁき∋藩兌埓嫻い成立しにくい関係にあるといえる。このような観点から考えた場合,上記判決はまさに正当なものと評価できよう。
     フランチャイズシステムに関しては,フランチャイザーは,合理的な経営の観点から,直販店を各地に設置するのではなく,別の法人格がそれぞれ独立に営業活動を行うことを前提にしつつ,集客力を高めるために一定の屋号,商号を統一的に使用させてブランド価値を高め,かつ,サービスが低下しないようにフランチャイジーに指導等を行う必要がある。
     しかし,他方で,それゆえに,´△遼‥責任が追及されるリスクを負担し,ジレンマの陥る状況にある。この二律背反の要素を有するフランチャイズシステムには,今後も同様の問題が生じる可能性があろう。
  • 【元従業員が新設した会社の営業行為等について,旧会社(前職会社)が,逸失利益等の損害賠償請求をした訴訟事件】第一審全面勝訴:確定
  •  本件の事案は複雑であるが,事実関係の概要を整理すると,以下のとおりとなる。
     A会社の取締役であったBが,取締役在任中に,競業避止義務に違反し(但し,競業避止義務に違反するか否かの法的評価には当事者間に争いあり),自己名義で取引行為を行った。
     Bの知人でありA会社の元従業員であったCは,A会社と同様の業種をも内容とする新会社Dを設立し,営業行為を開始した。
     当時,A会社の取締役であったBは,A会社のために取締役としての通常の業務を行い,その実績を積み上げていたが,これにあわせて,一のとおり自らの名義でも取引を行い,また,A会社がコストパフォーマンス上,受注できない顧客などについては,新会社Dに紹介をしたこともあった。
     その後,競業避止義務違反を理由に,BはA会社の取締役を退任した。
     退任後,Bは,新会社Dに移籍した。
     概要,このような事実関係のもと,A会社は,Bに対して競業避止義務違反等を理由とする損害賠償請求をするとともに,新会社Dに対して,。造琉稻,紛ザ伴莪に協力し又はこれを幇助したこと,■造新会社Dに移籍することにより,Bの違法な競業取引によって形成された事業を,新会社Dが引き継いだことを理由に,合計2000万円超の損害賠償を請求したという事案であり,新会社D側の訴訟代理人として訴訟を追行した。
     上記,砲弔い討蓮ぃ漸饉劼亮萃役Bと新会社Dを設立したCの個人的な人間関係などが強調され,新会社DとBの行為が「一体」のものとして,主張された点,上記△砲弔い討蓮ぜ村租には,「移籍」の事実=「事業の引き継ぎ」として,主張された点に特色がある。
     本来,競業避止義務の負担者は,当該会社と特定の法律関係のある取締役や就業規則・誓約書等で特に競業避止義務を負担することとなる者に限定されるべきであり,A会社との関係で競業避止義務を負担しないCやCが設立した新会社Dは,A会社との間で競業避止義務を負うものではない。むしろ,Cや新会社Dには独自の営業の自由がある。
     そのため,上記,亡悗錣詼‥責任については,新会社Dらが,Bの行為が違法であることを認識しつつ,これに荷担してA会社に損害を加える意図があったなどの事情がない限り,安易に認められるべきではないであろう。
     加えて,ここでは,具体的にどの取引に対してどのような態様で協力,幇助したかという点こそが,問題とされなければならないといえよう。しかし,本件ではBが新会社Dに便宜を図ったことはあるという程度の事情はあっても,新会社DがBに対してBの競業取引上の便宜を図るなどの事情はなかったため,その当然の結果であるが,A会社側はこの点についての主張,立証をすることができなかった。
     次に上記△砲弔い討蓮た佑篭般海暴昌する経験・体験を積むことによって,ある程度の技能・知識や人脈等を保有・集積するものであり,転職に際しては,当然,これらの経験などを生かすものであるところ,これは,職業選択の自由の一環である以上,かかる自由に基づき,新会社DにBが移籍したことをもって,殊更に「事業の引き継ぎ」がなされたとして,新会社Dにその法的責任を負担させるという点には大いに疑義があるところである。
     仮にいくばくか顧客を引き継いだとしても,新会社Dが,A会社との関係で,なぜそれが許されないのか,また,そもそも,顧客自身にも取引相手を選別する自由はあるところ,その顧客の意思は法的責任との関係でどのように評価されることになるのかといった問題点もあるところである。
     判決の認定は多岐にわたるが,結論として,A会社の新会社Dに対する損害賠償請求は全て棄却された。
     企業内紛争やこれに派生した紛争は,熾烈な対立になることが多く,紛争が長期化することがあり,判断に悩む微妙な事案も多い。
     本件もこのような類型に属する紛争といえ,関係裁判例の調査や法律構成の検討・分析等に際し,膨大な時間を要するものであった。           
  • 【従業員による業務用PCデータやWebページ情報データの削除行為に関し,損害賠償請求が認められた訴訟事件】第一審:一部勝訴,第二審:第一審維持:確定
  •  会社に対して反感を有する従業員らのうち一人が,自らが会社から支給されていた業務用PCデータの全て及びWebページで広告されていた会社の実績情報の大半などを削除した。そこで,当該会社は,当該従業員(退職)に対して,訴訟を提起した事案である。
     会社側の原告訴訟代理人として関与した。

     本件では,情報データの削除に関し,)消権限の付与の有無(会社の承諾の有無),∨消行為の社会的相当性,B山桶曚覆匹亡悗掘み烈に争われた。
     )消権限の付与の有無に関しては,事実認定の問題であったため,この点については原告代表者の尋問,被告本人尋問等が行われ,裁判所によって信用性が評価された。∨消行為の相当性については,仮に,たとえ多少不正確な情報や違法な事柄に関する情報であっても,容易に「修正」が可能であれば一従業員の判断で不当に「抹消」して良いということにはならない旨主張し,裁判所も概ねこれを肯定した。B山桶曚砲弔い討蓮だ賁膓伴圓砲茲辰鴇霾鵑鯢旧する費用全額が認められ,かつ,Webページ上の会社の実績情報が当該会社にとって唯一の営業ツールであったことから,逸失利益の一部が損害として認められた。

     IT技術が普及した現代社会において,コンピュータ情報が業務に占める割合は大きく,担当従業員によって,会社の財産ともいうべき情報が不当に抹消されることが許容されては,経済社会は成り立たなくなる。当該会社のWebページ上で公開された会社実績情報は,極めて重要な営業ツールであったことから,逸失利益が一部しか認められなかった点については不満が残るものであったが,情報の重要性を適切に評価し,逸失利益を一部ではあっても認め,かつ,PC本体の価格を超える情報復旧費用を全額,損害として認めた点については,情報データの重要性が適切に反映されたものと理解できたため,概ね常識にかなった結論と考えている。
  • 【被相続人の実兄が、相続財産である被相続人名義の預金を解約し受領したことが、不法行為であるとして、相続人より、損害賠償を請求された訴訟事件】第一審勝訴・控訴審和解
  • 被相続人が死亡した後に、被相続人の実兄が、被相続人名義の預金を解約し、その一部を受領したところ、相続人から、同行為が不法行為にあたるとして、受領した金員分及び慰謝料等として約1200万円余の損害賠償を請求された事案。実兄側の被告訴訟代理人として関与した。 本件では、被相続人は、実兄の事業を長年に渡り手伝い、実兄の預金管理、及び実兄がオーナーの企業の出納を担当していたという事情があったが、他方で、実兄側が被相続人に対し具体的に金員を預けた時期、その金額等の特定ができず、また具体的な資料もなかったことから、立証活動は難航を極めた。そこで、被相続人の収入及び通常考えられる支出の概算を特定し、被相続人名義の預金の出捐者が実兄側以外にあり得ないこと、被相続人と仲の良かった従業員から詳細に事情を聴取し、証言によって被相続人の暮らしぶり、金遣い等を明らかにし、さらには、実兄側の会社は国税調査を受け、同調査の結果、多額の使途不明金が判明しており、同不明金発生時の現金保管、管理者が被相続人であったこと等の事実を、細やかに立証したところ(他方で、相続人側は被相続人の生活実態、現実の収入を全く把握していないことが判明した)、第一審は、原告相続人の請求を全て棄却する判決を下した。 これに対し、相続人は、控訴したところ、控訴審では、被相続人の配偶者及び子との間の出来事であるので早期に解決するという観点から、金100万円を支払うことで和解した。 実兄の金員であることを直接証明できる証拠がなかったため、非常に困難な案件であったが、いわゆる間接事実を丁寧に積み上げ、それが功を奏した点で、希有な事例といえる。
  • 【人工妊娠中絶の手術の際に、子宮穿孔と小腸穿孔を引き起こされた女性の損害賠償請求交渉事件】
  • 産婦人科医が、人工妊娠中絶術を施行する際、鉗子(へガール拡張器)の適切な操作を誤るなどの過失により、被害者に対し子宮穿孔と小腸穿孔の傷害を負わせた事案。被害者側の代理人として交渉を行うこととなった。
    もっとも、この案件では、被害女性には後遺障害は生じず、出産能力に影響はなかったため、医師側と交渉し、250万円の賠償金を支払っていただくことで、和解解決した。
  • 【医療過誤に基づき細菌性髄膜炎に罹患した乳児の損害賠償請求訴訟事件】第一審にて勝訴的和解
  • 生後3ヶ月20日程度の乳児に、哺乳量の低下、何となく元気がない(not doing well)、約39℃の発熱等の症状が継続し、末梢白血球数19、400μl程度、血小板数60、000μlという状態となったが、医師からは中耳炎等と診断されたため、適時適切な治療の機会を逸し、同診断日の6日後に、細菌性髄膜炎により高度の水頭症、脳萎縮、てんかん、脳性麻痺、精神発達遅延などの後遺症を残すこととなり、「四肢麻痺」として障害等級1級の認定を受けるに至った事案。被害者側の原告訴訟代理人として、後遺障害逸失利益等を含め、損害賠償請求訴訟を提訴した。
    細菌性髄膜炎には、約1日で脳に重篤な障害を及ぼすなど、電撃的に進行するものもあり、一般的にいっても、乳児、小児事案については、凄まじい速度で病状が進行・悪化するため、当該医師の診断時にそもそも細菌性髄膜炎に罹患していたのか(最終診断日から発症までの空白の6日間で発病、進行した可能性。因果関係)、医師の診察時には、医師の診断のとおり、「中耳炎」や「突発性発疹」に過ぎなかったのか等、医学上の事項が大きな争点となった。
    法律論に関しては、前記因果関係の問題の他、予見可能性(過失)も問題となった。つまり、通常の診断過誤が争点となる場合には、当該疾病の特異的な症状が発現し、医師がそれを認識していたということを中心に予見可能性の立証を行うことになるものと思われるが、乳児の細菌性髄膜炎では、成人の細菌性髄膜炎とは異なり、ケルニッヒ徴候、項部硬直等の細菌性髄膜炎の特異的な症状に乏しいことが多いという点に逆に特徴があり、本件においても、特異的症状と言われる症状を呈してはいなかったため、「過失」の立証をどのように行うべきかということに困難が伴った。
    後医のカルテの精査、各種医学文献の調査、協力医との相談・面談等を繰り返し行いつつ、約3年間に渡り訴訟活動を行った。裁判では、耳鼻科医の証人尋問、被告医師の本人尋問、被害乳児の両親の本人尋問も行われた。これらの後、裁判所より、被害者側の主張する事実関係を全面的に採用し、損害賠償として医師側に9500万円を被害者側に対して支払うよう「和解勧告」がなされ(判決文のような形式であった)、結果、最終的に和解が成立した。
    医療訴訟においては、事柄の性質上極めて専門的な事項が問題となるため、当該分野を専門とする医師のご協力をいただくことが必要不可欠である。しかし、他方で、医師の日常業務は多忙の一言に尽き、また、当然のことであろうが、好んで紛争案件に関与することは忌避されるため、訴訟案件では被害者側にご協力をいただけないことも多いものと思われる。上記訴訟では、心ある医師の惜しみないご協力をいただくことができたことが勝因であろう。
  • 【民事再生】
  •  東京地方裁判所平成22年(再)第1号
     債権者数:約160名,負債総額:約25億
     平成22年1月5日  再生手続開始申立て
     平成22年7月14日 再生計画認可決定
  • 【破産管財人による否認権行使訴訟事件】一審一部勝訴:確定
  • 住宅フランチャイザーが、フランチャイジーの経営不振に基づき(フランチャイザーに対しても数千万円という多額の負債あり)、フランチャイジーの破産申立約2ヶ月前に、当該フランチャイジーに、施主からの請負代金を入金させることなどを目的とする専用口座を開設させ、同口座をフランチャイザーが管理することにより、各工事現場の邸毎に入出金を管理して各現場毎に利益が上がるような体制を構築し、フランチャイジーの経営を建て直そうとしたが、その後、当該フランチャイジーが破産を申立てたことから、専用口座内の預かり金とフランチャイジーに対する債権とを相殺処理した。また、フランチャイジーの破産申立直前に、工事途中の物件をフランチャイザーにおいて引き受けることを目的に、当該物件の請負代金債権を譲り受けていた。同各行為に関し、破産管財人から、専用口座を開設させ、それを預かる行為などが、抜け駆け的かつ優先的に自らの債権の保全を図ったものとして否認権を行使された事案(専用口座に入金され相殺処理した2573万0591円分、及び破産申立直前の時期にフランチャイジーから譲渡を受けていた債権2420万円分の支払を請求)。フランチャイザー側の被告訴訟代理人として関与した。 同訴訟では、建築業界における一般的な資金管理の方法、当該住宅フランチャイズシステムにおいてはフランチャイザーがフランチャイジーの財務状況を詳細に把握することは不可能であること等を具体的に主張、立証し、フランチャイジーの元従業員等からも事情を聴取した上で、フランチャイジーの業務の実情、フランチャイザーの経営への関与の態様を明らかにすべく、証言台に立っていただいた。 裁判所は、直前の債権譲渡分2420万円の一部については、破産管財人の請求を認め、その余は棄却、専用口座の入金部分である2573万0591円については、フランチャイザー側の主張を認め全て請求を棄却した。 昨今の経済情勢のもと、建築業界では倒産・再生案件が多く、破産申立直前の行為が否認権の対象となるケースは多い。破産管財人等との交渉、否認権訴訟の当事務所取扱い件数は増加傾向にある。
  • 【名目的取締役・名目的監査役に破産法上の悪意推定規定が適用されるか否かが問題となった事案】A事件一審一部勝訴(被告2名,うち1名の被告監査役につき勝訴:控訴審和解,1名の被告取締役につき敗訴:敗訴取締役については第一審判決後訴訟外にて4割カットで和解成立),B事件一審一部勝訴:控訴審第一審判決維持:上告不受理
  •  破産会社が破産申し立てをする直前に,‥該破産会社の登記簿上の取締役が代表者を務める会社が,破産会社に対する貸金,工事代金の弁済を受けた(B事件基礎事実)。△泙拭て韻犬破産会社の登記簿上の監査役,そのほかの登記簿上の取締役も,破産申立直前に,破産会社に対する貸金の弁済を受けていた(A事件基礎事実)。
     本件は,これらに対し,破産管財人が,ゝ載の破産会社の取締役が代表者を務める会社及び記載の上記監査役らに対して,否認権を行使し,弁済金を返還するよう請求した事案である。同事件につき,上記会社,監査役,取締役ら側の被告訴訟代理人として,訴訟を追行した。

     一 破産法第162条2項1号,同161条2項によると,破産会社の取締役,監査役等の役員については,弁済当時,破産会社が支払不能であることを知っていたものと法律上推定されることから,同法が適用されれば,「知らなかった」という事実を完璧に立証しなければならないことになり,立証上の負担が著しく加重する関係にある。
     上記法律上の規定は,破産会社内部で業務執行等を行う権限と地位にある者は,破産会社の財務状態を把握していることが通常であるという経験則を前提に,これらの者が自らの立場を利用して,ほかの債権者に先立ち,破産申し立て直前に自らの債権の回収を図ることを許さない趣旨の規定と考えられている。
     そこで,当方は,訴訟の被告らは,単なる登記簿上の取締役,監査役に過ぎず,役員としての実体のない以上,実質的には取締役,監査役ではなく,破産会社の内部事情を知り得ない,そのため,同法の趣旨は妥当しない旨主張し,争った。

     第一審判決は,A事件では当方の法律解釈論を採用し,前記破産法上の推定規定の適用を排除したが,B事件では表見的な取締役であることは,一事情にすぎないとして,当方の法律解釈論を採用せず,前記破産法上の規定の適用を認めた。
     結果,A事件と,B事件で裁判所の判断は2分することとなった。

     二 なお,B事件では,前記破産法上の推定規定を巡る問題とは別に,一部は勝訴している。これは,当該会社が,破産会社が下請け業者に代金を支払って工事を進行させることを目的に,貸し付けた金員(1000万円)の弁済について「有用な行為」である旨の認定を行い,破産管財人の請求を棄却したものである。
     すなわち,本件事案では,破産会社において,継続中の工事の下請け業者に支払いを行い,工事を進めてもらうために,当該会社に対して,不足する1000万円の貸付けを依頼し,これを受けて,当該会社は,現実に,破産会社に対して1000万円を貸し付けていた。この結果,下請けは中断することなく,工事を継続し,竣工にこぎ着けることができたことから,破産会社は,注文者である事業主から,破産申立直前に,多額の竣工金を受領できたという関係にあった。
     そこで,当方は,破産会社にとって利益となった上記貸付(1000万円分)の返済は,全体を一体としてみれば,破産会社にとって有用な行為であった以上,法律上の規定にはないが,抜け駆け的な不当な弁済を禁じる否認権の趣旨は妥当せず,破産管財人の否認権行使は不相当であるとの主張を展開した。
     裁判所は,「本件貸付金弁済は,被告の破産会社に対する本件貸付金の返済であるところ,本件貸付けに係る破産会社の借入日は平成19年6月28日,被告に対する返済日へ同年7月9日であって,本件貸付と本件貸付金の弁済が同一の当事者間においてなされていることに加え,本件貸付けと本件貸付金弁済の間隔は2週間に満たず時期的に極めて接着していること,本件貸付けが●●ハウスを竣工させるために必要な下請工事業者等に対する支払に充てられるなどその目的が特定されていて,被告においても本件貸付けによる金員が他の債権者の共同担保に属する可能性があることについての認識は乏しかったとみられるなどの事情を総合すると,本件貸付け及び本件貸付金弁済は一連の行為として包括してみるのが相当である」と判示して否認権行使は「相当ではない」との結論を下し,当方の主張を採用した。
     【第一審判決後】
     A事件は,和解で終結したため,控訴審で判決は出されなかった。
     B事件は控訴審では和解は成立せず,判決となり,控訴審判決でも第一審は維持された。すなわち,控訴審判決では,前記破産法上の推定規定に関し,「規定の文言上,その職務を行うことのない名目的な取締役であるかどうかを区別しておらず,また,名目的取締役という用語自体,明確さを欠くものであるから,上記の「取締役」とは,法令の規定に従い,取締役の地位にある者をいう」と判示した。これにより,当方は,上告受理申立てを行ったが,最高裁は判断をせず,上告不受理にて事件は終結した。
     「取締役とは何であるのか」「破産法の趣旨は」という法律論から考えた場合,高裁判決の認定は容易に首肯することはできないところであるが,ただ,会社の「取締役」として登記することには,法的に重要な効果が付随する可能性があるということは実務的にはコンセンサスを得られているところであるので,実務的にはやむを得ない判決,とも感じている。
  • 【下請建設会社の破産管財人が,元請建設会社に対して,出来高請求をした訴訟事件】:勝訴的和解
  •  元請負会社が,オープン日が決定している店舗建築の依頼を受け,下請会社に責任施工で発注をした。しかし,下請会社の資産状態は悪く,同社は,人員を手配できない,ミス工事などを続けた挙げ句に,現場を撤退し,破産申立を行った。破産後,当該下請会社には裁判所より破産管財人が選任され,元請会社に対して,2500万円余の出来高請求をしたのが,本件であり,被告元請会社側の訴訟代理人として訴訟手続を行った。
     建築工事請負契約では,注文者側の一方的な解除であろうと,債務不履行解除であろうと,「工事内容が可分であり、しかも、当事者が既施工部分の給付に関し、利益を有するとき」(最高裁判所昭和56年2月17日判決参照)であれば,請負人は注文者に対して出来高請求をすることができる。元請会社としては,工事ミスや途中で撤退した下請会社に対しては一円も支払たくないと思うのが通常であろうが,法律論としては,そうであるからといって,「途中部分を無償で取得する」ことを正当化することはできない。
     そこで,上記訴訟では,出来高の一項目一項目毎に,‥方手配工事の特定,当該工事の相当な工事金額の特定を行うとともに,自社人員の経費増大分,ミス工事の是正工事費用等を丁寧に金額換算して,積み上げ,出来高金額の否認,相殺の主張等を行って反論を展開した。
     結果,破産管財人との間で協議を行い,請求金額の28%程度の金額である700万円で和解をすることで合意ができた。当方の主張が相当程度通った中での和解であり,実質勝訴的和解である。 

弁護士紹介

HOME

前のページへ戻る

ページの先頭へ戻る