住宅・建築
瑕疵担保責任

ハウスメーカーが建築した戸建て住宅(築約9年)に過大な不同沈下が生じた事案において,ハウスメーカーが宅地造成工事を実施した建設造成工事に対して,建物の建替え工事費用や仮住まい費用等の賠償を請求した損害賠償請調停事件

ハウスメーカーには施主に対する瑕疵担保責任,造成工事会社には不法行為責任が考えられる事案であったところ,造成工事会社はハウスメーカーとの交渉時から一貫して,法的責任はないとの強硬な態度であったため,当職がハウスメーカーの代理人として,建物の建替え工事費用や仮住まい費用等の実費の一部につき賠償を求めて,造成工事会社に対して調停を申し立てるに至った(なお,本来,同様の案件においては,施主の代理人として造成工事会社に対して損害賠償を請求することが多いが,本件の施主は高齢で体調も優れず,訴訟の当事者としての負担を強いることができなかったため,ハウスメーカーの代理人として,調停を申し立てている)。本件は,本件宅地において生じている地盤沈下の原因が何であるかが重要かつ唯一の争点であったことから,地盤工学の権威である大学教授に沈下原因の技術的検討を依頼し,造成工事会社の不法行為責任を基礎づけるための立証活動を行った。具体的には,現地において採取した試料を元に土質試験を行い,その結果とボーリングデータから得られた土質条件を用いて圧密沈下を考慮した有限要素法による解析(FEM解析)を実施した。その結果を「地盤沈下原因に関する意見書」として,「①本件宅地は切盛境界に建設されており,自然地盤と盛土地盤では地盤の剛性が大きく異なるため,一般的に相対的に軟らかい盛土部分の変位が大きくなり,不同沈下や側方流動が起こりやすいところ,②本件宅地の特徴として,火砕流が風化することによって粘土化した地層が表層比較的浅い部分に堆積しており,低強度,高圧縮性の地盤を形成している」ことから,結論として,「表層付近に堆積する火砕流風化粘性土の層厚が谷に向かって増大するという地盤条件に起因する不同沈下によって変状していると考えられるため,本件宅地上に再度,戸建て住宅を建てる場合には,本件宅地の沈下原因となっており,今後も圧密変形が継続する可能性の高い火砕流性粘土層を良質土に入れ替えるなど,地盤補強ないし地盤沈下対策を実施することが必要条件となる」との技術的見解を調停委員会に提示した。その結果,造成工事会社は法的責任を認めない姿勢は変えなかったが,一定程度の金銭負担には応じると態度を軟化させ,造成工事会社が1000万円を超える額を負担する内容で調停が成立した。ハウスメーカーとしては,賠償額が満額回答ではなかったとはいえ,当初,一切金銭負担を認めなかった造成工事会社が,当方が沈下原因論に対する意見書を提出した後から,大幅な譲歩に応じてきた経緯からすると,当方の立証活動が功を奏して調停での解決に至ったと評価できる。

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