建築士法・建設業法等対応
建設業法

下請業者の元請業者に対する工事代金請求に対し、元請業者は、下請業者の施工に瑕疵が存在するとして工事代金の支払を拒絶したため争いになった訴訟事件

鉄骨の戸建住宅建築において、設計図書に記載された高さの天井高が確保されなかった、鉄骨が不必要に露出していた等の瑕疵が存在したとの事案につき、ⅰ)下請負業者が、元請負業者に対して工事残代金を請求したのに対し、ⅱ)元請負業者が、下請業者に対して、瑕疵の補償費用相当額の損害及び施主に対して支払った遅延損害金等の請求を行った事件である。本事案において、当方は、元請業者の代理人として訴訟を追行した。
 第一審の裁判所は、元請業者が、信義則上、施工図をチェックするなど適切な方法により設計意図を補完するとともに、工事監理と同様、その者の責任において、工事を設計図書と照合する義務等を負っていたと判断した上で、瑕疵の補修費用等の損害につき、下請業者側が2から3割程度の限度で責任を負い、元請業者側が7から8割程度の限度で責任を負うのが相当であると認定した。
 しかし、現実には、元請業者は、鉄骨造建物の建築を熟知していなかったことから、自らを専門業者であるとアピールしていた下請業者に発注したとの経緯が存在する上に、元請業者が施工図を作成するとの取り決めも存在しなかった。また、建築実務上、元請業者よりも実際に施工をする下請業者において専門的な知識を有している場合が多い上に、法的にも、元請業者が工事監理業務に類似した業務を実施する義務を負うとは直ちに判断することもできなかった。そのため、元請業者は、第一審の判決を不服として控訴を提起した。
 控訴審においては、第一審裁判所が却下したため認められなかった関係者を証人とする証人尋問も実施された。そして、控訴審裁判所は、第一審判決は誤っており、元請業者が7から8割程度もの責任を負うとは判断できないとの心証を明らかにした。
 その結果、最終的に、瑕疵に基づく損害に関し、元請業者が4割程度の責任を負うことを前提とする内容の和解が成立した。

同分野の案件実績