住宅・建築
瑕疵担保責任・契約不適合責任

請負契約締結前、具体的な仕様の内容について確認が行われなかったことが説明義務に違反するとして、施主が施工者に対して説明義務違反に基づく損害賠償を請求した訴訟事件

戸建住宅建築を目的とする請負契約締結前、施工者は、施主より、給水配管の仕様に関して特段の要望を受けなかった。そのため、施工者は、オプション工事であるサヤ管ヘッダー方式ではない給水配管の仕様を前提とした配管設備図を作成し、同図面を契約内容として施主との間で請負契約を締結した。ところが、建物完成後、施主は、サヤ管ヘッダー方式による工事が施工されるべきであったし、少なくとも、事前に、サヤ管ヘッダー方式による工事を実施するか否かの意思確認が行われるべきであったとして、施工者に対する損害賠償請求を内容とする訴訟を提起した。本事案において、当方は、施工者の代理人として訴訟を追行した。なお、本件では、その他に問題となっていた給水管からの水漏れについては、瑕疵が認められている。
 まず、当方は、契約書添付の設計図書である配管設備図が契約内容を示すものであるところ、同図面はサヤ管ヘッダー方式を前提としていない以上は、現状の施工に瑕疵は存在しないと主張した。そして、裁判所も、当方の主張とおり、サヤ管ヘッダー方式による施工が行われていないとしても瑕疵は認められないと判断した。
 瑕疵に該当しないことを前提としても、相手方は、施工者より交付を受けたパンフレットの記載や展示場でサヤ管ヘッダー方式の紹介を受けたこと等により、当然にサヤ管ヘッダー方式にて施工されるものと誤信したと述べた上で、このような誤信を防ぐために、施工者がサヤ管ヘッダー方式による施工が採用されていないことを説明する必要があったと主張した。これに対し、当方は、住宅の仕様は多岐にわたるため、相手方より明示の要望を受けていない仕様についてまで説明をする法的義務など存在しない等と反論した。
 そして、裁判所は、具体的な仕様がオプション工事に該当するか否かを判断するために必ずしも専門的知識が必要となるわけではないし、契約締結時に施工者が適切に説明をしていれば、施主において、サヤ管ヘッダー方式が契約内容に含まれていると誤信していたことに気付くことができたとしても、「それは結果からみてそうだ」というにすぎないと判示した。その上で、裁判所は、サヤ管ヘッダー方式が、「本件契約の内容になると殊更誤信させるようなパンフレットの記載等がない中、被告の側で、原告がオプションが契約内容に含まれると誤解していないかを逐一確認すべき義務があるとまではいえない」として、施工者が積極的に施主を誤信させるような行為を行なっていない限り、契約内容として確定された仕様を逐一確認すべき義務までは負わない旨を判示し、サヤ管ヘッダー方式に関する施主の請求を棄却した。

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