吉川 幹司
弁護士
パートナー東京事務所
木材市場にて木材を購入した買主は、問屋である木材の売主に対して代金を支払ったが、その後、現実に木材の調達を行う委託者が倒産した結果、問屋である売主が木材を引き渡さなかったため、買主が売主に対して木材の引渡しを求めた事案。買主の代理人として訴訟を追行した。なお、ここでいう問屋とは、委託者のために、売主との間で木材の販売をする者のことであり、木材の調達等は全て委託者が行うが、売買契約自体は、問屋である売主と買主との間で成立することになる。
問屋である売主は、委託者が調達した木材が木材市場に保管されていたにもかかわらず、基本契約において定められた期間内に買主が木材の引渡しを受けていない上に、委託者が倒産したため木材引渡請求権は履行不能により消滅しているから、買主の木材引渡請求が認められないことは明らかであると主張した。
これに対し、買主は、木材市場に購入した木材の入数とおりに梱包された木材は存在していなかった以上は、買主が購入したものとして分離・特定された木材は存在していないし、同木材は没個性的なものであり容易に調達が可能であるため委託者が倒産したからといって木材の引渡請求権が履行不能になることはなく、かつ、購入した木材が調達されていない以上はそもそも基本契約上に定められた期間内に木材の引渡しを受けることは不可能であったと主張した。
第一審判決は、基本契約において木材の引渡期間が規定されている以上は、同規定をもって、その後の各売買契約における木材が特定されているといえるとした上で、同期間内に引渡しを受けなかった以上は、買主の木材引渡請求は認められないとした。
第一審判決に対し、買主は、控訴を提起し、木材の調達が行われていない基本契約締結時においてその後に調達される木材が特定することはなく、また、基本契約にて定められた期間内に木材の引渡しを受けなかったからといって、そもそも木材が調達されていないのであれば木材の引渡しを受けること自体不可能である以上、期間内に引渡しを受けなかったことをもって買主の木材引渡請求権が消滅することはないと主張しました。
これに対し、控訴審判決は、委託者において買主が購入した木材としての木材を分離し梱包した事実は認められないため、基本契約に定める期間内に買主が木材の引渡しを受けていないとしても木材引渡請求権が消滅することはない等として、買主の主張を全面的に認め、第一審判決を取り消し、買主の請求を認めた。
本件を担当した弁護士