商取引・ビジネスロー・競争法
消費者取引契約対応(各種業法対応含む)

適格消費者団体との交渉

 消費者契約法は,「消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」ものとして制定された法律ですが,法改正を重ねる中で,この「適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができる」との制度が設けられたことで,個別の訴訟案件の中で,取り消しや無効が主張されるのみならず,適格消費者団体から,積極的に事業者に対して、同事業者が利用している約款規定への介入などが発生するようになりました。
 当職が対応したことがある事案は、次のような事案でした。
 熊本地震の発生時、様々な建物がその被害に遭いましたが、建設途中の出来形についても、例外ではありませんでした。そうした中、とあるハウスメーカーでは、不可抗力による損害の負担者に関する規定として、約款において,「前項による損害その他の不可抗力に基づく費用について,・・・受注者が善良な管理者の注意義務を果たしたとき場合は発注者の負担とします。」との規定を設けており、出来形に発生した被害の復旧費用についても、同約款規定に基づき、発注者側に費用負担を求めていました。そうしたところ、何人かの施主から、その地域の適格消費者団体に対して、「このような扱いは、消費者にとって不利なのではないか」との相談が寄せられたことによって、同適格消費者団体から上記の約款規定の修正申し入れがなされた、というのが事の始まりでした。
 さっそく、当職は、このハウスメーカーの依頼を受け、代理人として、この適格消費者団体の理事を務める弁護士らと協議を重ねました。先方からは、様々な質問がなされ、それに対して、当方から回答を行っていきながら、上記約款規定の必要性及び他の準公的団体が作成している工事請負契約約款にも、同種の規定が存在していることを説明し、他の適格消費者団体においても、「消費者契約法に照らして、違法とまでは言えない」との判断が示されている事案等を引用し、先方に対する説得を続けました。
 最終的には、適格消費者団体側において、「今回は、修正までは求めない。」との言質を取り付けるところまで漕ぎつけることができた、という事案でした。

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