住宅・建築
近隣関係紛争・境界関係紛争

太陽光パネルの反射光により、隣地所有者に受忍限度を超える損害を与えたことを理由として損害賠償請求がなされた事案

概要及び原判決の判断:施主Aが施工業者Bに北西側への太陽光パネルの設置を要望し、Bはこれに応じて屋根の北西に太陽光パネルを設置した。
 これに対し、隣地所有者Cらが、太陽光パネルの反射光により、サングラスをかけなければ洗濯物が干せない、裁縫ができないほどに眩しいと主張して、①施主Aに対し、太陽光パネルの撤去及び損害賠償請求、②Bに対し、損害賠償請求を行った事案である。
 原判決は、①施主Aに対し、太陽光パネルの撤去及び損害賠償を命じ、②Bに対して、損害賠償を命じた。
 また、原判決の内容は、証拠等をほとんど精査しておらず、反射光が生じていることそれ自体を違法とするかのような判示であったため、当事務所は、施工業者Bより依頼を受け、控訴審から代理人に就任することとなった。
 なお、施主Aは控訴提起しなかったため、施主Aとの関係では判決が確定した。
論点:太陽光パネルによって生じた反射光が隣地所有者の受忍限度を超えて損害賠償の対象となるか。
結論:東京高裁は、「(本件における反射光の)まぶしさの強度は、一般に用いられている屋根材と比べてどの程度強いかは明らかではなく、また、反射光が被控訴人ら建物に差し込む時間は比較的短く、まぶしさを回避する措置を採ることが容易であるということができるのであるから、これらを総合すると、本件パネルの反射光による被控訴人らの被害は、それが受忍限度を超えるものであると直ちに認めることはできない。」と判示し、隣地所有者Cらの家屋に生じている反射光は受忍限度を超えるものではなく、施工業者Bに損害賠償義務はないと結論づけた。
 反射光の発生は、太陽光パネルに限らず、窓ガラスやガルバニウム鋼板等でも生じるものと考えられるが、反射光が発生することそれ自体が当然に違法とされるものではなく、あくまで諸般の事情を総合考慮の上で決せられるということになる。
 本判決の事案では、北西側の太陽光パネルの設置は違法ではないと判断されたものの、あくまで総合考慮による判断であることに留意したい。そのため、本判決が「本件パネルの反射光は、それが相当まぶしく感じられる場合が生じ得るものであるから、その設置に当たっては、北側の隣接家屋である被控訴人ら建物とそこに居住する被控訴人らへの配慮が求められるというべきではある。」と判示するとおり、太陽光パネルを設置する際には、周辺建物への配慮はなお必要であろう。
 もっとも、太陽光パネル設置件数増加に伴い、相談件数が増えている事案に関し、一つの指針を示したものとして参考になると思われる。