不動産取引
賃貸・賃貸管理対応(不動産の明渡、賃料回収等)

ハザードマップにおいて、液状化の危険性が指摘されていることを説明しなかったまま不動産を売買したことにつき、債務不履行責任等が請求された事案

概要:本件は、不動産(土地)の売買契約に関し、当該土地が市の提供するハザードマップ上に「液状化の可能性が極めて高い」と表記されていたことから、買主が売主及び仲介業者について、債務不履行責任等を主張した事案である。当方は、売主側の代理人に就任した。
 なお、当該ハザードマップは、インターネット上で誰でも閲覧が可能である。
論点:本件の論点は多岐にわたるところ、原告の主張の概要は次のとおりである。
 ①売主の調査説明義務違反を理由とする債務不履行解除
 ②瑕疵担保責任に基づく契約解除
 ③錯誤無効
 ④事情変更法理による契約解除
 ⑤告知義務違反及び説明義務違反による不法行為責任
結論:まず、原告は、当初、本件土地に液状化の危険があるという主張をしていたため、当方において、売主側代理人として、土地自体が「現実に」液状化等の危険があることの立証を強く求め、本件土地は、ハザードマップに記載されているものの、客観的性能に問題はないという点を強調した。相手方は、当方の主張を受けて、現実に土地自体に液状化の危険があるか否かは主張しないこととし、あくまでも「土地の客観的性能とは無関係に、ハザードマップに記載されている事実」のみをもって上記各論点の主張をするとした。
 当方は、ハザードマップの正確性や本件土地がメッシュの切れ目に近い区域であることを強調したところ、原審は「本件マップの客観的正確性には限界があり、とりわけ本件土地に関する本件マップの客観的正確性には限界があると言わざるを得ない」とした上で「本件マップにおいて、南関東地震が発生した際、本件土地は液状化の危険性が極めて高いと記載されていることは、購入希望者に重大な不利益をもたらすおそれがあり、その契約締結の可否の判断に影響を及ぼすことが予想される事項に当たるということはできない」と判示した。また、控訴審では、上記判断からさらに踏み込み、「本件土地について液状化の可能性が高いかどうかは不明というほかなく、本件マップの客観的正確性を前提として当事者の法的な義務又は責任の有無を論ずることは、失当である」とまで判示し、本件土地について、ハザードマップの記載が正確であることを前提とした原告の主張について「失当」と断じている。
 上記事情を前提に、原審・控訴審ともに、売主にはハザードマップの有無、内容等について告知義務及び説明義務を負わないと判断し、その他の主張についても全てを排斥した。
 なお、仲介業者に対する請求も否定されている。