住宅・建築
瑕疵担保責任・契約不適合責任

使用した屋根材の仕様が誤っていた場合の費用負担者

 Aが、設計・監理業務をX建築士事務所に、建築請負業務をY社に依頼した施設の新築工事請負契約において、屋根工事においては、Y社がZ社という屋根工事の専門業者に下請に発注して工事が進められていました。
 屋根工事に際しては、屋根材として不燃材料認定を取得している材料を使用することが設計図書においても表示されていたところ、Y社は、Aとの間で屋根材の変更契約を締結し、誤った仕様の屋根材を用いて、Z社をして屋根工事を施工しましたが、後の完了検査の段階で、X建築士事務所が使用材料の誤りを指摘し、Y社がやり直しの工事を実施したところ、Y社が,X建築士事務所に対して,屋根工事が着工される前に,少なくとも当該変更によって建築基準関係規定に適合しなくなる可能性があることは説明すべきであり,これすらも怠り漫然と屋根工事を完了させたことが不法行為に該当するとして,Z社に対して,屋根工事の専門業者であるにも関わらず,検査済証が取得できない屋根材での施工を漫然と行ったとして,瑕疵担保責任(民法638条1項)に基づき,損害賠償として1230万円弱を請求してきた、という事案で、当職は、X建築士事務所の代理人として対応しました。
 本件の審理に当たっては,屋根材の変更に際して,AとY社の間で具体的にどのようなやり取りがなされたのか,その変更に当たって,X建築士事務所がどの程度関与することができたのか、といった点を明らかにするため、かなり細かな時系列の整理作業が行われました。また、Y社が請求してきていた損害賠償請求の中には、屋根のやり替え工事に掛かった費用の他、一連の問題のせいで、Y社がAに対して請求し損ねた追加変更工事費用といったものが含まれており、それら損害費目の整理についても精査されました。
 その上で、裁判所は、一級建築士の調停委員2名を参加させる調停手続に付した上で,X建築士事務所と,Z社の過失割合を検討し,調停委員会からの意見としては,監理者であるX建築士事務その過失割合が2,元請業者のY社が7,下請業者のZ社が1との判断が示されました。
 上記の責任割合を前提としつつも,分担の対象となるのは,そもそも屋根のやり直し工事に掛かった費用だけであり、その費用についても、同工事から利益率を控除した工事原価をベースとすべき,との議論を展開し,調停委員会及び他の当事者を説得し,最終的に,X建築士事務所としては,請求を受けていた金額の3%強の解決金を負担するとの内容での和解に漕ぎつけることができました。