不動産取引
不動産取引関係争訟

施主都合解除の有無が争われた事案

 依頼者は,設計・施工業務を受注した工務店でしたが、施主との間で、まず、暫定的なプランで請負契約を締結し、請負契約締結後、詳細なプランを詰めていくという作業を行っていたところ、施主が希望する間取り・プランを実現するためには当初の契約に追加して、追加変更工事費用として約150万円が必要となることを説明したところ、施主側が、契約解除の意思表示をしてきたため、同解除の意思表示は施主都合解除に該当するとして、民法641条に基づき、逸失利益等の請求を求め訴訟提起をした事案になります。
 原審は別の弁護士が担当していたのですが、施主側は、施主の希望するプランを請負契約締結時の金額で施工することが請負契約の内容であったと主張し、そうであるにも関わらず、追加変更工事代金として約150万円の支払が追加で必要となることを伝えることは、当初の請負契約の内容を否定し、その契約に定められた債務の履行を拒絶するものに他ならず、債務不履行に該当する、などと主張して、施主側が行った解除の意思表示は、債務不履行に基づく解除であるとの主張が全面的に受け入れられ、既払いとなっていた契約金100万円の返還を求める反訴請求が認められ、施主都合解除の主張を前提とする請負人側からの損害賠償請求は棄却されてしまいました。
 当職は、上記の原審判断をひっくり返すべく、控訴審から関与しましたが、控訴理由書においては、契約書上の記載からは、原審の上記判断は導き得ないことを、契約書が処分証書であることから演繹的に説明し、その他、重要事項説明書の記載、契約締結時のやり取りなどを詳細に説明することによって、当方の立場を論証しました。
 また、債務不履行解除の解除原因となるような債務不履行事由は、一定程度のハードルがあるものであり、簡単に認められるものでは無く、債務不履行解除が認められない以上、施主側がした解除の意思表示は、民法641条の施主都合解除であることを丁寧に主張したところ、控訴審では、当方の主張が全面的に認められ、施主側のした解除の意思表示は、民法641条の施主都合解除と認定され、同条に基づく逸失利益として、当方が主張していた請負代金額の7%相当との主張も認められ、逆転勝訴することができました。
 事案の解決としては、控訴審の判決が確定したため、相手方より、控訴審判決に基づく支払いを任意に履行してもらい、無事、終了しました。
 この最終的な結論は、丁寧に付き合ってきた工務店の想いに報いることができたことと、施主都合解除の場合に認められる損害賠償請求に、逸失利益が含まれ、かつ、その金額算出として、請負代金額の7%相当との主張が認められた点において、裁判例としての意義があると考えております。

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