吉川 幹司
弁護士
パートナー東京事務所
賃貸借契約終了時、賃貸人及び賃借人が立ち会った上で、賃貸の対象となっていた居室(本件居室)で原状回復が必要な箇所の確認が行われた。そして、賃借人は賃貸人に対して敷金を支払っていたが、同敷金は、上記確認に基づき実施された原状回復の費用に充当された。ところが、賃借人は、賃貸人が実施した原状回復は認められないとして、賃貸人に対し、敷金の返還を請求した。本事案において、当方は、賃貸人の代理人として訴訟を追行した。
当初、賃借人は、原状回復の対象となった床材や壁クロスの疵は存在しないなどと主張していた。そのため、当方は、原状回復工事実施前に撮影していた写真や動画を証拠として提出し、疵が存在していたことを明らかにした。また、床材については、床材張替前の既存床材が一部保管されていたため、当方は、同床材を裁判所に持参した上で、床に存在する疵の状況を示した。
その後、賃借人は、床材や壁クロスに疵が存在すること自体は認めるに至ったが、本件居室の床材等は、安価な材であって極めて疵がつきやすいものであることからすれば、発生した疵等は通常の使用に伴う結果にすぎないと主張するに至った。そのため、当方は、本件居室の床材と全く同様の床材を利用して、同床材に固いものを落下させたり、ある程度力を入れて硬いもので擦ったりするなどの実験を実施した。その上で、当方は、実験状況を撮影した動画等を証拠として提出し、本件居室の床材には簡単には疵がつかないことを明らかにした。
最終的に、裁判所からの説得もあって、賃借人は、自らの請求を全面的に放棄することに同意をしたため、賃借人による請求放棄を内容とする和解が成立した
本件を担当した弁護士