井上 雅之
弁護士
パートナー東京事務所
概要:本事案は、個人である被告が代表取締役を務めていた会社から、建売住宅を購入した原告が、住宅の外壁タイルが剥がれるなどして補修費用相当額の損害が生じたとして、清算人の任務懈怠に基づく損害賠償請求(原告が訴訟を提起した時点で、被告が代表取締役を務めていた会社は清算結了していた)、不法行為責任に基づく損害賠償請求をした事案である。
論点:①清算人の任務懈怠に基づく損害賠償請求
②不法行為に基づく損害賠償請求
結論:論点①に関し、原告は、清算人たる被告において、原告が清算会社に対する損害賠償請求権を有する債権者であることを知っていたと主張し、これを前提として、被告が原告に対して債権の申出の催告を行わなかったことは清算人の任務懈怠であるなどと主張したが、裁判所は、被告において、原告がいかなる内容の損害賠償請求権を有しているかを認識することはできない旨判示し、原告は、「知れている債権者」(会社法499条1項)に該当しないとした。
次に、論点②に関し、原告は、タイル剥落が基本的安全性を欠く瑕疵であるとして、代表者である被告に対する不法行為を主張したが、裁判所は、瑕疵については判断することなく、代表者個人である被告について、施工に瑕疵があることを認識することはできなかったとして、故意・過失の点で不法行為責任を否定した。
本件を担当した弁護士