不動産取引
賃貸・賃貸管理対応(不動産の明渡、賃料回収等)

既払いの更新事務手数料の返還を求められた事案

 依頼者が仲介業者として関与している建物賃貸借契約(買主:個人、借主:事業者)において、複数回にわたって、賃貸借契約の更新がなされていました。
 そして、賃貸借契約更新時には、借主から仲介業者に対して、更新事務手数料が支払われてきていたところ、借主から、仲介業者である依頼者に対して、既払いの更新事務手数料は、法律上の原因のない支払であった等と主張の上、簡易裁判所に、更新事務手数料の返還請求訴訟が提起されたのが本件事案になります。
 この頃、更新料を収受することが、消費者契約法に違反するのではないか、との判断が高等裁判所で出されており、それを受けた流れとして、訴訟提起された事案と思われます。
 簡易裁判所における手続では、当事務所以外の弁護士が代理人として対応していたのですが、簡易裁判所では、不当利得に基づく金銭債権に、消滅時効が成立する範囲外のものについては、賃借人は、更新事務手数料を、更新事務に必要不可欠な支払であると誤認して支払い続けていた、等と認定の上、簡易裁判所において、独自に「更新事務報酬」として1万0500円程度の費用であれば、受領する法律上の原因がある等と認定の上、その限度を超えて支払われていた更新事務手数料の返還を命じる判決が出されていました。簡易裁判所は、このような独自の見解が示されることがあり、予測がつかない部分が多々あるのが怖いところです。
 当職は、控訴審からの受任を打診されるにあたって、借主が事業者であることから消費者契約法の適用は無いはずであるが、一時期、消費者契約法10条との関係で話題になった「更新料」及び「敷引特約」に関する判例法理、並びに「更新事務手数料」に関する裁判例の調査を行ったうえで、控訴理由書の作成準備を行いました。
 もっとも、原審の判断は、上記のような法律論以前に、事実認定のレベルで、借主と仲介業者の間における更新事務手数料を支払う旨の合意が成立していることをおよそ無視するものであったため、控訴理由書中では、主に、更新契約時に交わされている書面より認定できる「更新事務手数料支払いの合意」、私的自治の原則より、同合意が最大限尊重されなければならないこと等を骨子とし、更に本件では消費者契約法の適用を受ける前提を欠くことを丁寧に主張しました。
 控訴審における審理は1回結審でしたが、結論としては、当方の主張が全面的に受け入れられ、逆転勝訴することができました。
 原審で対応していた弁護士が、なぜ、「更新事務手数料支払いの合意」の成立の主張と対応する証拠を提出していなかったのかは不明ですが、きちんと、すべき主張を行っていないと敗訴することもあるのだと、勉強になった事案でした。

同分野の案件実績