瀬﨑 結花
弁護士
アソシエイト東京事務所
第1 検討事項
貴社のPM会社が仲介業者向けの広告において、「業務委託料 2.5か月 フリーレント 2.0か月 ※2025年4月末迄の申込に限る」との表示につき、この条件でのキャンペーンは、4月に限らず、今後も延長していく方針である場合に、かかる表示が法令に抵触しないかを検討します。
なお、「業務委託料」とは、PM業務の業務委託料を指し、2025年4月末までの申し込みに対してこれを割引する旨を表示する趣旨であること(従って、仲介業者を経由して不動産賃貸業を営むオーナー向けに表示がなされることを想定していること)を前提と致します。
第2 検討①―「フリーレント2.0か月」「※2025年4月末迄の申込に限る」との表示につ
いて
1 景品表示法との関係
⑴ 結論
本件表示は、景品表示法に抵触するリスクはあります。
⑵ 検討
ア 本件表示は、有利誤認表示(法5条2号) に該当するおそれがあるため、景品表示法の規制にかかるか否か検討します。
イ 景品表示法は、一般消費者を対象とした表示を規制するものです 。そのため、一般消費者を対象に表示しない広告については、景品表示法の対象外になります。この点、消費者庁表示対策課及び不動産公正取引協議会にヒアリングを行いましたが、同様の回答を得ました 。
ウ 以上より、本件表示は、エンドユーザーを含む一般消費者への表示が予定されていないという前提であれば、景品表示法の規制にかからないということになります。
エ しかしながら、表示が一般消費者に向けたものでなくとも、消費者がそれを認知し誤認するものであれば、事業者に対する表示であっても景品表示法の不法表示に該当し得ることになります 。実際に該当すると判断された事案 では、消費者に対し同様の表示が行われることを認識していたことも加味されています。
本件表示についてみると、ご懸念の通り、「フリーレント 2.0か月」、※2025年4月末迄の申込に限る」との表示は、エンドユーザーにも同内容の記載が表示される恐れはあります。むしろ、フリーレントで利益を得るのは、表示をすることが想定されている仲介業者ではなく、賃借人たるエンドユーザーであることを踏まえると、表示の横流しが想定されているといえます。そうだとすると、一般消費者が本件表示を認知し、誤認するものとして、景品表示法の規制が及び、原則通り、有利誤認表示に該当することになります。
2 宅建業法との関係
⑴ 結論
本件表示は、PM会社の事業形態によっては宅建業法に抵触する可能性があります。
⑵ 検討
ア 本件表示は、宅建業法上の誇大広告(法32条)に該当するおそれがあるため、宅建業法の規制にかかるか否か検討します。
【宅建業法 第三十二条】 宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあつせんについて、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
イ 「業務に関する広告」
「業務に関する広告」とは、宅建業者がその業務に関して、不特定多数又は特定多数の者に対し、宅地建物取引に関して告げるものをいうと解されます 。本件表示が対象とする仲介業者は、「不特定多数又は特定多数の者」に該当します。
「業務」とは、宅建業に係る業務をいうと解されます(国交省土地・建設産業局不動産業課ヒアリングより。)。
貴社のPM社が、賃貸借契約の締結についての仲介業務や、代理業務を行う場合に、「フリーレント2.0か月」になるという趣旨で本件表示を行う場合には、本件表示も、上記「業務に関する広告」に該当する可能性があります。
ウ 「実際のものよりも著しく有利であると人を誤認させるような表示」
貴社のPM社が、賃貸の仲介の過程で本件表示をする場合、「業務に関する広告」について、宅建業者が行う業務を含むと解される場合、有利誤認表示に該当するかを検討する必要があります。
「実際のものよりも著しく有利であると人を誤認させるような表示」とは、特定の項目について、宅地建物についての専門的知識や物件に関する実際の情報を有していない一般購入者等を誤認させる程度のものをいいます 。例として、「駅まで1㎞の好立地」と広告に表示されているが、直線距離では駅まで1㎞程度であるものの、実際の道のりでは4㎞ある場合、駅までの道のりが1㎞であると一般の購入者を誤認させるような表示が挙げられています。
本件表示について、通常の条件と比較して、本件表示の条件が著しく有利とまではいえないとも思え、国土交通省土地・建設産業局不動産業課にヒアリングを行いましたが、一応同様の回答を得ました。もっとも、実際は期間限定でないにもかかわらず、限定であるかのように表示することは、景品表示法上は、有利誤認表示に該当する以上、上記口頭でのヒアリングをどこまで信用して良いかは疑念が残ります。
エ 以上より、本件表示は、宅建業法上の誇大広告に該当しないとは言い切れないと考えます。
第3 検討②―「業務委託料 2.5か月」「※2025年4月末迄の申込に限る」との表示につ
いて
1 景品表示法との関係
⑴ 結論
本件表示は、景品表示法の適用対象とはならない可能性があり、この場合には景品表示法には抵触しません。
⑵ 検討
ア 上記第2にて検討したとおり、景品表示法は、一般消費者を対象とした表示を規制するものです 。そのため、一般消費者を対象に表示しない広告については、景品表示法における表示規制の対象外になります。
イ 本件表示は、仲介業者を経由して、不動産賃貸業を営む不動産オーナー向けに、PM業務の業務委託料に関して表示を行うものと想定され、不動産オーナーには、個人で不動産賃貸経営を行う者も含まれることが想定されます。
このような個人が、一般消費者に該当する場合には、本件表示も上記第2の表示と同様に、景品表示法に抵触するリスクがあることになります。
ウ この点、景品表示法における一般消費者に上記のような個人で不動産賃貸経営を行う者が含まれるかについて論じた文献や裁判例等は不見当でしたが、消費者契約法上の「消費者」に該当するか否かについては、行為者の経験や回数に左右されず、行為をある程度の期間継続させる意図があるか否か目的で判断し、消費者契約法上の「消費者」に当たらないと判断された裁判例 があります。このような裁判例からすると、景品表示法上も、不動産賃貸経営を行う者は一般消費者には該当せず、本件表示は、景品表示法における表示規制の対象外となり、景品表示法には抵触しない可能性があります。
2 宅建業法との関係
⑴ 結論
本件表示は、宅建業法に抵触しないと考えられます。但し、事業形態によっては宅建業法の適用がなされる可能性があります。
⑵ 検討
ア 上記のとおり、宅建業法32条にいう「業務に関する広告」とは、宅建業に係る業務に関する広告をいうものと解されますので、PM業務(=非宅建業)に関する広告であると解される本件表示については適用が無いものと考えられます。
但し、PM業務の中に賃貸借契約の締結仲介や、代理業務(=宅建業)が含まれる場合には、上記第2の表示と同様に、宅建業法が適用され、これに抵触するリスクがあることになります。
3 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律との関係
⑴ 結論
本件表示は、賃貸住宅管理業法に抵触しないと考えられます。但し、事業形態によっては賃貸住宅管理業法の適用がなされる可能性があります。
⑵ 検討
貴社のPM社がいわゆる賃貸管理業として本件表示を行う場合、法令の規制はありません。
なお、PM社である以上、サブリース形態ではないと考えられますが、仮に貴社のPM社がサブリース業者として本件表示を行う場合、同法のうち、「特定賃貸借契約の適正化のための措置等」の規制がかかり、賃貸住宅管理業法28条規定の広告規制が存在します。
【賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 第二十八条】 特定転貸事業者又は勧誘者(特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者をいう。以下同じ。)(以下「特定転貸事業者等」という。)は、第二条第五項に規定する事業に係る特定賃貸借契約の条件について広告をするときは、特定賃貸借契約に基づき特定転貸事業者が支払うべき家賃、賃貸住宅の維持保全の実施方法、特定賃貸借契約の解除に関する事項その他の国土交通省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
4 なお、4月限定のキャンペーンであることを前提に契約を締結した仲介業者が、その後キャンペーンの継続を知った場合、当該請求が認められるかは別として、錯誤を理由に取消しを求めるなど民事上の責任を追及されるリスクも残るため、トラブル回避の観点からは、「期間の延長について特に告知などを行わず継続し続ける」ことは避けるべきであると考えられます。
本件を担当した弁護士
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