住宅・建築
工事請負契約

杭工事が終了した段階で契約解除となり出来高請求を受けたが,これが否定された事案

第1 事案の概要 
被控訴人(依頼者)が控訴人との間で,被控訴人を注文者,控訴人を請負人として,建物新築工事請負契約を締結したところ,工期遅延・代金未払い等を理由として互いに当該請負契約の解除を主張し,控訴人からは,解除時点までに施工されていた杭工事の出来高請求がなされた事案。

第2 請求内容・争点
請求内容等は多岐にわたるが,請負契約約款18条2項に,「工事着工後契約が解除されたとき,控訴人は,工事の出来形部分と搬入済みの工事材料等の所有権を被控訴人に移転するものとし,控訴人の算定によってその代金を精算する。」旨定められており,同規定に基づく出来高請求の可否が問題となった。

第3 判決のポイント
■ 施工された杭工事に有益性が認められないとして,出来高該当性を否定。
【判決抜粋】 
「被控訴人は,A社から杭抜き費用を被控訴人負担とすることとして本件建築予定地を代金3億8950万円で買い受けたいとの意向を示され,その後,同社から既存杭を現状渡しとする条件で代金3億8000万円で買い受けたいとの申入れを受け,本件建築予定地を同社に売却したところ,本件杭工事が施工されていたことによって,被控訴人が受け取る本件建築予定地の売買代金はむしろ下がったのであるから,被控訴人に本件杭工事が施工されていたことによる利益があったとはいえない。また,(中略)控訴人は,本件請負契約解除の時点又は被控訴人が本件建築予定地を売却するまでの時点において,被控訴人に対し,杭工事施工報告書を渡していなかったのであり,これがない以上,被控訴人が本件杭工事の成果を利用することはできなかったものと考えられる。このことは,別件訴訟における控訴人代表者の供述からも明らかであり(乙57),実際にも,A社から本件建築予定地上の建物建築工事の施工を請け負ったB社は,既存杭を残置したまま,これを利用せず,避けて建物建築工事を行ったと認められるから,かかる点においても,本件杭工事が被控訴人に有益なものであったとはいえない。したがって,控訴人がした本件杭工事を出来高とは評価できないから,控訴人の本件約款18条2項前段に基づく出来高請求は理由がない。」

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