控訴審がJASS19に基づいて注意義務を認めなかったのは、本書が施行者への教育・啓発を目的とする以上、この文献は最低基準を定めるというより、新たな技術的手段を啓発する内容であると判断したためだと考えられます。論文では先進的な施工方法が紹介されることが多く、それが判例に反映されることで、注意義務の基準が厳しくなることがあります。発注者と施工者の間では、リスクとコストを照らし合わせて検討するリスク・コミュニケーションが重要です。この判例は、学術界の見解をただ受け入れるのではなく、実務上どのような運用がされていたのかに着目した点で評価できます。