不動産取引
不動産取引関係争訟

不動産取引における自殺事故物件の説明義務

(概要)売却予定の本件建物の敷地上に、約30年前に存在した旧建物にて自殺事故が存在したことに関し、不動産会社は本件建物の売却にあたり同事故の存在を買主に説明すべき義務を負うか。
(アドバイス)不動産取引においては、従前に自殺・殺人等の事故が存在したこと自体が、嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的瑕疵であると評価され得る。そして、売主は、心理的瑕疵が存在する不動産を売却する際に、当該心理的瑕疵を認識していたのであれば、当該心理的瑕疵に関する事実を買主に説明すべき義務を負うものと解釈される。
また、人が死亡した事実が心理的瑕疵に該当するか否かに関しては、具体的な法規制は存在しないため、事案毎に、当該死亡発生の場所・事情、当該土地建物の状況、事件発生から売買までの経過期間、当該不動産の利用目的及び地域性、周辺住民における認識、売買価格への影響等の諸般の事情を考慮の上で判断することになる。例えば、自殺の事案において、遺体が数か月放置されて腐乱死体となって発見された場合や、マスコミに取り上げられたような場合については、心理的瑕疵該当性や説明義務が認められる可能性が高まるものと判断される。
本件では、過去に本件建物で自殺事故があったとのことであるが、同事故は約30年前に発生したもので本件建物の売買まで相当期間が経過しており、同事故のあった建物自体が滅失している以上、上記事故がマスコミ等に取り上げられるなどして現在も地域住民に認識されているような事情がない限り、心理的瑕疵に該当しないと判断される可能性が高く、買主に説明義務が生じる可能性は低いと考えられる。

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