住宅・建築
住宅・建築関係争訟

建築後10年以上経過した物件における施工不良を理由とした不法行為責任

 新築工事の請負契約においては、現在、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」と言います。)によって、構造耐力上主要な部分の瑕疵及び雨水の浸入を防止する部分の瑕疵については、引渡後10年間の瑕疵担保責任を負う強行規定が設けられています。そのため、一般の工務店などでは、引渡後10年を経過した建物については、施主から指摘される瑕疵の内容がどのような内容であっても、「瑕疵担保責任が切れているので」として、有償での補修対応をするところが多数ありますが、損害賠償義務を負う可能性がある法的請求権としては、瑕疵担保責任の他に、不法行為責任(民法709条)が存在するため、注意が必要です。
 他方で、瑕疵があれば、どのような瑕疵でも不法行為責任が認められるわけではありません。最高裁平成19年7月6日判決は「建物は,そこに居住する者,そこで働く者,そこを訪問する者等の様々な者によって利用されるとともに,当該建物の周辺には他の建物や道路等が存在しているから,建物は,これらの建物利用者や隣人,通行人等(以下,併せて「居住者等」という。)の生命,身体又は財産を危険にさらすことがないような安全性を備えていなければならず,このような安全性は,建物としての基本的な安全性というべきである。そうすると,建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者(以下,併せて「設計・施工者等」という。)は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当である。そして,設計・施工者等がこの義務を怠ったために建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計・施工者等は,不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。」と判示したことから、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」か否か、との点、及びその瑕疵を作出したことについて、過失(注意義務違反)があったと言えるか、との点が争点となることが多く、その場合には、問題となっている事象が、当時の施工水準に照らして、問題のある施工に基づくものなのか、設計者からの指示に基づくものだったのか、といった点を、争っていくことになります。ここが、無過失責任とされる瑕疵担保責任との違いですが、最長で、引き渡しから20年間の責任追及がなされる可能性のある不法行為責任に基づく請求事案は,これからも増加することが予想されるところです。

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