住宅・建築
住宅・建築関係争訟

従業員等を被告とする前訴で敗訴した施主が会社を被告として提起した後訴が訴権濫用に当たるとして訴え却下された事案

原告が,20年以上前に被告(当方)が建築した建物に関する土地の測量に誤りがあったため,近隣との境界紛争において不利に働いたとして,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

原告は,過去に被告の元従業員や,当時地積測量を行った土地家屋調査士を被告として訴訟を提起し,いずれも敗訴が確定していたが,再度同一内容の訴訟を提起するとともに,並行して,被告に対する訴訟を提起していた。
建物建築からも20年以上経過しており,消滅時効の完成により,原告敗訴が確定していた事案であったが,当方からは,原告の訴訟提起が,被告に不利益・負担を課すことを主たる目的とするものであって,訴権濫用として訴え却下されるべきことを主張したところ,かかる主張が採用されるに至った。裁判所は,原告による他の被告に対する前訴の蒸し返しの事実や,不誠実な訴訟追行態度等も踏まえ,「原告の訴訟提起の目的は,専ら訴訟の相手方を被告の立場に置くことで相手方に対して不利益や負担を課すことにあるものと推認される。…原告による被告に対する訴え提起が初めてであるとうかがわれることを考慮しても,本件訴えは,民事訴訟制度の趣旨を没却するものとして,訴権の濫用に当たり不適法であるというべきである」と判示した。
なお,原告は控訴せず,第1審の上記判決がそのまま確定している。

訴権濫用を理由とする訴え却下については,最高裁判例が存在せず,下級審の裁判例として東京高裁平成13年1月31日(判タ1080号220頁)が存在するところ,本件は,原告から被告に対する訴訟提起自体は今回が初めてであっても,訴権濫用を認定した点で,特徴的と言える。

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