萩野 貴光
弁護士
アソシエイト名古屋事務所
第1 事案の概要
被告(依頼者)が施工した本件駐車場に自動車を駐車していた原告が,被告の施工に注意義務違反があり,大雨によって駐車場内の雨水が適切に排出されず,駐車場が雨水により冠水した結果,駐車していた原告の自動車に浸水して損害を被ったとの主張がなされた事案。
第2 請求内容
被告は,建築基準法,下水道法,下水道法施行例・岡崎市下水道条例に定められた技術上の基準に従って施工し,本件駐車場を造成し,排水設備を設置すべきであり,本件駐車場ないし排水設備に基本的な安全性を欠くことがないように配慮しなければならず,本件駐車場の下水の流下に支障が生じることで溢水し,本件建物の入居者などの本件駐車場の利用者の生命,健康及び財産を侵害しないようにしなければならない。
被告は,本件駐車場が基本的な安全性を欠くことがないように配慮し,本件駐車場周辺の調査等を適切に行い,排水設備の公共下水道への接続を適切に行い,また,本件境界壁の高さを高くしていれば本件駐車場内の冠水を未然に防ぐことができたにもかかわらず,被告は上記義務を怠ったため,本件駐車場内の雨水が適切に排出されず,雨水で溢れて冠水した結果,本件駐車区画に駐車していた原告車両内部へ浸水するに至った。
よって,被告は民法第709条に基づく損害賠償責任を負う。
第3 争点
被告の不法行為責任の有無
第4 判決のポイント
■ 冠水という現象が発生していたとしても,具体的な施工不良等が主張・立証されないとして,責任を否定。
【判決抜粋】
「原告は,本件駐車場の冠水につき,被告の施工に関して基本的な安全性を損なう瑕疵が存在することを前提に不法行為責任が成立する旨主張する。しかしながら,原告が特定した主張を見てみても,冠水した結果について責任を問うものに等しく,被告の施工の問題点を客観的な技術水準との関係,あるいは法令等の規定との関係で違法性があることについて具体的に主張立証しているものとは認められない。したがって,原告の主張は不法行為法上の注意義務違反の主張立証として不十分であり,理由がないと言わなければならない。」
本件を担当した弁護士