萩野 貴光
弁護士
パートナー名古屋事務所
1 事案の概要・争点
設計者が委託者との間で設計・監理契約に基づき設計図書の作成等を実施したものの,委託者から設計報酬が支払われなかったことから,設計者は当該設計報酬及びその1割に相当する弁護士費用等の支払いを求めて訴訟提起した。当職は設計者側の代理人として対応した。
2 双方の主張
委託者側は,設計図書が交付されていない,設計内容が予算に反する等の主張を展開して設計報酬の支払義務を争いつつ,弁護士費用についても支払義務を争った。
これに対し,当方は,委託者側の主張に対して全面的かつ詳細に反論しつつ,弁護士費用につき,「松本克美ら編『専門訴訟講座②建築訴訟(第2版)』882頁によれば,「専門的知見を要する建築関係訴訟を適切に遂行するためには,弁護士の関与が必要であるから,弁護士費用についても,相当な範囲では損害に含めることができると解すべきである。裁判例をみると,認容した損害額の約1割の範囲で弁護士費用が認められているものが多い」とされている。(中略)一般に,建築は,「設計」と「施工」によって成り立つものであるところ,本件は「設計」に関する係争であり,その内容としても,どのような設計図書の作成が求められるか,あるいはその設計図書の当否がどうかといった点などが争点になっており,専門的知見を要する訴訟であるといって差し支えない。」,「そしては,原告は被告の債務不履行によって弁護士依頼を余儀なくされている以上,弁護士費用が損害として認容されるべきである。」等と主張した。
3 裁判所の判断
裁判所は,委託者側の主張が排斥されるべき理由を詳細に認定し,当方請求の設計報酬等を概ね認めた上で,当方請求の弁護士費用について,「本件で原告が支払を求めている弁護士費用は,.請求アないしウの原因となる契約及びこれに付随する原因に基づく金員の請求であるため,基本的には弁護士費用は認められない。もっとも,本件は設計監理に関連する訴訟であって,その専門性,立証の難易等の事情に鑑みれば,弁護士費用を認めるのが相当である。」と判断し,当方請求の弁護士費用を認容した。
上記については,高等裁判所においても維持される結果となった。
本件を担当した弁護士