住宅・建築
瑕疵担保責任・契約不適合責任

打設した杭の支持層未到達

 依頼者X社は工事請負業者で、施主からの依頼を受け,既存建物の解体撤去・地盤改良工事・新築建物の建築工事を予定していました。施主は、解体工事の段階から、かなり細かい点を指摘しては値引きを要求してきてくるなど、いわゆる口うるさい施主でした。そうしたところ、地盤改良工事の際、見積上、2.55mと改良深度が明示されていた柱状改良体が、2.2m~2.3m程しか施工されていないことが判明し、施主は、X社に対して施工済みの柱状改良体の撤去及び2.55mの柱状改良体の再施工を求めてきたため、X社の代理人として介入した、というのが本件になります。
 当職は、見積上、明示されていた長さには足りない部分があることは確かであるが、現状の施工状況を前提として、地盤改良体としての強度としても何ら問題はなく、柱状改良体の撤去は何ら必要ないことを主張した。
 なお、依頼者であるX社は、解体工事の段階からも値引き要求が激しかった点等を危惧し、このような施主を相手にして、この先、新築建物の建築工事を進めていくことに不安を覚えていたことから、契約関係自体の解消をすることも望んでいました。しかし、請負人であるX社側から解除することのできる解除事由が存在していなかったという事情がありました(一般的に、工事請負契約においては、施主側には、施主の都合による解除権は認められていますが、そのような無理由の解除権は請負人側には認められていません。)。
 そこで、①上記柱状改良体は、地盤改良工事として何ら問題はなく、撤去は不要であること、②ただし、合意解約に応じるのであれば、請負人であるX社から同地盤改良工事費用の請求はしないこと、といった概要の提案を行い交渉した結果、概ね同内容の合意を締結することができ、依頼者であるX社は、この施主との契約関係から離脱することができました。
 上記した通り、請負契約において、施主には施主都合解除が認められる一方で、請負人側から契約を解除することは困難となっていますが、早い段階からクレーマー気質であることが判明した場合には、多少の損失の負担をしても、早期の契約関係からの離脱を図った方が、中長期的に見た損害の発生を回避することができます。本件では、合意解約を促すために、地盤改良工事費用を放棄した形になりましたが、副次的な論点としては、打設済みの柱状改良体の撤去ないし撤去費用の負担という論点もあったところでしたが、早期の段階で契約関係を解消することができたことから、被害を拡大させずに解決できたものと評価することができるかと思われます。

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