井上 雅之
弁護士
パートナー東京事務所
概要:本件は、屋根材が大量にひび割れ、8年間に7回もの張替えが行われた事案で、原告は、屋根材が割れたことにより雨漏りの危険性が高まり、かつ、屋根自体の耐久性も低下したなどと主張して、債務不履行責任、瑕疵担保責任、不法行為責任等に基づき、損害賠償請求を行った。
論点:慰謝料請求の可否
結論:屋根材が割れたことや何度か張替え工事を実施したこと等の事実には争いがなく、当該行為について不法行為が成立するか否かが争点となった。
当方は、既に屋根が補修されていることを強く指摘し、業者側の対応に問題がなかったこと等を主張した。
基本的に、財産的損害については、当該財産の補修がなされれば、損害は治癒したものと判断され、重ねて慰謝料を認めるのであれば、請求者が利得することになるから許されない。
慰謝料が認められるのは、補修だけでは足りない特段の事情がある場合に限られるが、本件では特段の事情はないものとして、原告の請求を退けている。
近年、慰謝料という言葉はよく聞くようになったが、あくまでも認められるのは例外的場面であって、基本は認められないという点については留意しておくべきであろう。
本件を担当した弁護士