土屋 秀晃
弁護士
アソシエイト仙台事務所
事案
:依頼者(宅建業者)が,個人の所有する中古建物の売買契約の締結を媒介したところ,買主(個人)から,雨漏りの発生・設備故障等に関する説明義務違反を理由として,全国宅地建物取引業保証協会の苦情解決申出がなされた事案である。事情聴取会において,委員から買主に対し,請求の拡張を煽る発言があり,大幅な請求拡張が行われたが,再度の事情聴取も行われないまま認証審査に移行しようとしたため,債務不存在確認の訴えを提起して認証審査を停止するとともに,期日外で買主と交渉し,第1回口頭弁論期日後,速やかに当初の当方提示額に近い金額で和解を成立させた。
論点
:媒介業者の調査・説明義務
対応
:依頼者が出席した事情聴取会において,委員から,事業者に通常求められていないレベルの調査・説明義務を前提とした指摘・発言があった旨を聴取し,今後,認証手続きに移行した場合,当該委員の関与の下では,事業者に厳しい判断がなされる可能性が高いと判断し,宅建協会の認証審査を停止する手段として,債務不存在確認の訴えの提起から関与した。
訴訟提起の結果,第1回口頭弁論期日後,買主本人が代理人を選任し,同代理人からは,拡張部分の請求を撤回し,買主の当初の請求額を前提とした和解提案がなされたため,同代理人と交渉し,①買主が,依頼者及び売主に対する請求を放棄する代わりに,②当方が,自主解決の段階で元々提示していた和解金額に近い金額を支払う内容で,和解を成立させ,同時に苦情解決申出手続きを終了させた。
対応に際し留意した点
:自主解決が頓挫した場合に,機械的に認証審査に移るという運用がなされていたため,買主が,自主解決の試みにおいて,依頼者からの和解金の提示に反発し,委員の発言を真に受けて,請求額を大幅に拡張(売買代金の半額に相当する金額の請求)したにもかかわらず,再度の事情聴取も行われず,認証審査に移行することが予定されており,速やかに訴訟提起を行ったことが,結果として早期かつ妥当な金額での解決につながった。
宅建協会の事情聴取会においては,委員の個性により,事業者には酷と思われる指摘・判断がなされる場合があるため,訴訟対応と同程度の理論武装・準備を要すると思われ,代理人として関与する以前から,依頼者からの法律相談・書面作成補助等,早期にリーガルサービスを提供することの有用性・必要性を痛感した事案であった。
本件を担当した弁護士