住宅・建築
瑕疵担保責任・契約不適合責任

建物基礎の構造上の瑕疵が争点となり基礎の再築費用相当額の損害賠償請求がなされた事案につき,構造上の瑕疵を実質的・技術的観点から判断し,瑕疵を否定した訴訟事件

工務店が,設計・施工した戸建て住宅について,施主側より,①ベタ基礎礎版の厚さ不足(設計図書150㎜:現況=最小142㎜),②ベタ基礎スラブ鉄筋のかぶり厚さ不足(法令60㎜:現況=最小4.7㎝),③ベタ基礎の鉄筋量の不足(日本建築学会基準D13@150:現況D10@200),④ベタ基礎立上り開口部の補強筋の未施工(補強筋無し),⑤ベタ基礎根入れ深さの不足(法令12㎝以上:現況10㎝以下),⑥地盤補強の未施工(自沈層あり)等が瑕疵として主張され,基礎の解体,再築等に関する損害賠償が請求された事案である。工務店側の被告訴訟代理人として関与した。
 一般に,建物の瑕疵や欠陥の有無を判断するにあたっては,設計図書,契約図書,建築確認申請図書などに従い建築されているか否か,建築基準法,同施行令,旧建設省告示(国土交通省告示),日本建築学会建築工事標準仕様書,住宅金融公庫融資住宅共通仕様書(旧)等,日本の建築界の通説的基準を満たしているか否かによって判断するものとされている。
 そのため,設計図書のみならず,上記のとおり,関係告示,学会基準などが,瑕疵の基準として原告側より主張され,本件では,上記基準に照らすと,未充足箇所が確かに存在することが,瑕疵の評価にどのように影響を及ぼすか,という点が問題となった。
 もっとも,本件では被告工務店は,常識的な施工方法に則り,十分な配慮を行い,施工を実施しており,また基礎の構造種別の選定にあたっては,地盤保証会社等の専門業者が承認し得る基礎を採用していた。また,保証期間も残存しており(第三者保証有り),将来,何らかの問題が生じても十分に対応できる体制と評価できた。
 そのため,上記を前提に,各法令の技術的趣旨,各技術基準の位置づけ(法令との関係)などを,第三者一級建築士の助力を得て,意見書,証人尋問等で明らかにして弁護活動を行った。
 この結果,裁判所は,単純に設計図書,法令,技術基準から形式的に判断するのではなく,訴訟で証拠として提出された各専門業者,専門家の意見等をも参考に,実質的・技術的観点から,法的評価概念である「瑕疵」を検討し,その全てにおいて瑕疵を否定した。
 上記判決は,控訴されず,第一審で確定した。

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