住宅・建築
瑕疵担保責任・契約不適合責任

宅地造成工事及び地盤へのパイル打設工事に瑕疵があるとして、施主が設計業者に対し、建物の建替費用相当額の請求を行った訴訟事件

宅地造成工事を実施した上で戸建住宅(本件建物)の建築が行われたが、宅地造成工事で施工された擁壁が行政の規定する仕様とおりに施工されていなかったため、宅地造成工事に関して検査済証の交付が受けられず、かつ、造成工事後に打設されたRCパイル先端が擁壁底盤上部に載るとの施工が行われた。また、RCパイルを打設した業者及び本件建物を建築した業者は、工事完成後直ぐに倒産した。そのため、施主は、造成工事に関する検査済証の交付を受けるには、本件建物を解体の上で、地盤よりRCパイルを抜き、造成工事をやり直す必要があるとして、本件建物の設計業者に対し、建物建替費用相当額の損害賠償請求を行った。本事案において、当方は、設計業者の代理人として訴訟を追行した。
 当初、訴訟では、設計業者は、施主より、造成工事及び本件建物建築工事の両工事に関し、設計監理業務の依頼を受けているとして、設計業者の債務不履行責任が認められることを前提に審理が進められていた。
 しかし、現実には、設計業者は、施主より、本件建物に関する設計監理業務の発注を受けたにすぎず、施主は、設計業者に対し、少額の費用の支払しか行っていなかった(造成工事やRCパイル打設工事に関し、施主より、直接には何らの業務の発注も受けていなかった。)。造成工事の設計については、施主は、造成工事の施工業者に対して設計・施工の両方を発注しており、設計業者は、造成工事の施工業者より造成工事の設計業務の依頼を受けた下請業者にすぎなかった(加えて、現に造成工事の設計業務を実施したのは、設計業者より依頼を受けた孫請業者であった。)。また、RCパイルの打設に関し、設計業者は、施主の要望を受けて、地盤改良を実施することが可能な業者を紹介したにすぎず、RCパイルの設計・施工には全く関与していなかった。
 なお、施主と設計業者との間の契約の内容を明確に示す契約書等の書面が存在しなかった。
 そこで、当方は、本事案において、誰から誰に対して費用が支払われているのか等の事情を明らかにした上で、関係者を証人とする証人尋問を実施し、設計業者は、施主より、本件建物に関する設計監理業務の発注しか受けていないことを明らかにした。
 その結果、裁判所は、施主と設計業者との間には、造成工事及びRCパイル打設工事に関する契約関係は存在しないと認定し、施主の設計業者に対する請求を棄却した。

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