住宅・建築
瑕疵担保責任・契約不適合責任

施主より多数の瑕疵が存在するとして損害賠償請求訴訟を提起された後、同訴訟で選任された鑑定人により不同沈下が発生しているとの鑑定結果が明らかにされた訴訟事件

当方は、施工会社の代理人として施主から提起された損害賠償請求訴訟につき対応した。
 施主は、多数の瑕疵が存在すると主張していたところ、床の傾斜の存在も瑕疵として主張していた。そして、施主の申し立てた鑑定の結果、不同沈下が発生しているためアンダーピーニング工法による沈下修正工事が必要であるとの鑑定意見が明らかにされた。これに対し、当方は、床の傾斜の原因は当初の施工誤差及び木材の不可避的な変形・たわみ等にあると主張した上で、沈下修正工事を実施しなくても、床不陸調整補修工事により床傾斜の補修が可能であると主張した。
 その後、再度の鑑定が実施された結果、不同沈下が発生しているとの鑑定意見は撤回された上で、床の張り替え等の不陸調整工事により床の傾斜を補修することが可能であるとの鑑定意見が明らかにされた。
 裁判所は、施主の請求金額765万円のうち、床の不陸調整工事及び未施工であることに争いがなかった基礎根入れ確保のための土入工事等の費用等相当額約150万円の損害賠償請求を認容し、その余の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。
 その他、本件訴訟においては、床の鋼製束がメーカー施工マニュアルとおりに千鳥に配置し施工されていないことが瑕疵である旨施主が主張していたが、裁判所は、「千鳥に配置されていない箇所が部分的にあることは当事者間に争いがない。しかし、本件全証拠によっても、それにより不具合が生じていることを認めることはできない。したがって、鋼製束が千鳥に配置されていないことは、瑕疵とはいえない」と判断している。
 また、施主は、瑕疵ある施工をしたこと等が施工会社の不法行為であるとして慰謝料、建築士調査費用及び弁護士費用の請求をしていたが、裁判所は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵が存在するとは判断できないこと、瑕疵による財産的損害について賠償を受けることでは回復できない損害が施主に生じたと解することもできないこと、本件訴訟は、通常の契約責任を問うものであること等を理由に、施工会社が不法行為責任又は不法行為に準じるような責任を負うものではないとして、慰謝料、建築士調査費用及び弁護士費用の請求を棄却した。
 なお、施工者の不法行為責任については、最高裁平成19年7月6日判決及び最高裁平成23年7月21日判決において、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」が存在する場合に施工者の不法行為責任が認められ得るところ、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵とは、居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず、当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である」旨判示されている。

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