不動産取引
不動産取引関係契約

液状化の危険性のある地層が存在することの説明義務違反

 依頼者は、施主より、収益物件の設計・施工を依頼された会社でしたが、平成23年2月末に施主に目的建物を引渡しましたが、施主は、諸々の瑕疵の指摘や値引き条件の履行を求め、残代金の支払を履行しませんでした。そうこうしているうちに、平成23年3月11日に東日本大震災が発生し、その後、施主は、目的建物が建設された土地には、一部液状化が発生する危険性のある地層が存在するにもかかわらず、かかる危険性に対する対策工事がなされていない等と主張の上、1000万円を超える金額の減額を求めてきたことから、任意交渉での解決は難しいと判断の上、残代金の支払いを求め、訴訟を提起しました。
 訴訟上で争われた瑕疵等は多岐にわたりますが(ただ、そのほとんどは、仕上がりの不十分さを指摘するものでした。)、施主が最も重視していた液状化対策工事不備の問題に関する双方の主張及び裁判所の判断は次のようなものでした。
 すなわち、施主側は、かねてより、発生することが予想されている大震災に備える建物の建築を依頼していたと主張の上、着工前に行われたボーリングデータに基づけば、一部、液状化が発生する危険性がある地層が確認されていたにもかかわらず、かかる地層に対する対策工事がなされておらず、また、着工前の時点でその説明がなされていなかったとして、説明義務違反があった等と主張しました。
 これに対して、当方は、設計段階で、地域係数も検討に入れた上での構造計算をしていること、液状化の危険性のある地層についても、ボーリング調査段階で明らかになっていたことから、打設予定としていた杭の杭長を、当初の予定の5mから8mへと変更し、液状化の危険性のある地層よりも深い位置へと杭頭が届くような設計を行い、実際にその内容に沿う施工をしていることを主張しました。
 最終的に、裁判所は、判決において、当方の主張を認め、本件においては、液状化の発生に対応するための対策工事が十分になされていると認定の上、液状化対策の不備を指摘する施主側の損害賠償の主張を退けました。
 なお、本件は、第一審判決の結果を前提として、強制執行にまでは至らず、施主側より任意の支払を受けることによって、無事終了しました。
 今回の施主側が、液状化の主張をするに至ったのは,明らかに東日本大震災の発生をきっかけとしたものでしたが,国土交通省が平成13年7月2日に発出している告示第1113号などにおいても、地震時に液状化するおそれのある地盤の許容応力度の定め方等が示されており、十分な配慮が必要となります。

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