不動産取引
不動産取引関係契約

施主の瑕疵の主張を全面的に認めた原審の判断を覆した事案

概要:本件は、事業者が、施主との間の請負契約に基づき建物を完成させ、建物を引き渡したにもかかわらず、施主が種々の瑕疵を主張して請負代金の支払をしなかった事案である。
 原判決は、施主の瑕疵の主張について、瑕疵該当性及び補修費用について、そのまま認容し、請負代金額の大部分が相殺されてしまったため、当事務所は、施工業者より依頼を受け、控訴審から代理人に就任することとなった。
 主な瑕疵としては、①玄関ドアの向き、②スリッパ収納棚の施工方法、③車庫の施工である。
 
論点:①施主の主張する各瑕疵の瑕疵該当性
    ②相当な補修方法・報酬費用の検討
結論:まず、①玄関ドアの向きについて、設計図書では左開きとなっていたところ、実際は右開きのドアが設置されている状況であったが、控訴審は、「玄関ドアについては設計図書は左開きとされており,控訴人も当初設計図書どおりの左開きのドアの設置を予定していたが,玄関内のスリッパ収納棚を壁面に埋め込む形で設置することができず,せり出す形になることとなったため,被控訴人の要望ないし指示に基づき,ドアを右開きに変更したものであることが認められる。」、「玄関ドアを設計図書どおりに設置すること自体は本来何ら不都合はなく,控訴人においてあえて設計図書と異なる施工をする理由はない」、「控訴人が被控訴人らの要望ないし同意なしに設計図書と異なる施工を行うことは考えにくい」と判示して、瑕疵該当性を否定した。
 次に、②スリッパ収納棚の施工方法について、被告は、壁面埋め込み式を主張し、原審の証人尋問においても、施主から埋め込み式にするよう依頼された旨の関係者の証言がなされていたが、控訴審は、「スリッパ収納棚を設計段階において壁に完全に埋め込むことについて,設計担当者と被控訴人らとの間で合意があったか否か定かではないものの,施工段階において,設計図書上,壁に埋め込むものとして指示されておらず,その後埋め込むことが合意されたとしても,上記スリッパ収納棚を被控訴人らの指定する壁に完全に埋め込むことは不可能なのであるから,この結果について,少なくとも施工業者である控訴人が責任を負うべきものとは認められない」と判示して、瑕疵該当性を否定した。なお、被告の主張のとおり、スリッパ収納棚を埋め込み式にした場合、当該スリッパ収納棚がエレベーター昇降路内に迫り出す形となる状況であり、もとより不可能な施工方法であった。
 そして、③車庫の段差については、原審は、被告主張の補修費用を満額肯定したが、控訴審は、被告主張の補修費用・補修方法は過大であるとし、原告が相当な補修費用と主張する額に近い額が認定された。

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