住宅・建築
瑕疵担保責任・契約不適合責任

瑕疵の無償補修に関する合意が否定された事例

発注者が、請負者に対し、完成建物の不備を理由に債務不履行、不法行為、瑕疵担保責任があると主張して損害賠償請求等を求めた事案に関し、当事務所は請負者の代理人として対応した。
なお、本事案では、原告より、瑕疵について被告が無償補修する合意があるとして、当該合意に基づく修補請求もなされていた。
裁判所は、各論点について、次のとおり判断し、原告の請求を棄却ないし却下した。

1 債務不履行責任について
裁判所は、「改正前民法下においては、請負契約において既に仕事が完成したが、仕事の目的物に瑕疵があるという場合には、もっぱら瑕疵担保責任のみが適用され、一般的な債務不履行責任の規定は排除される」として、債務不履行責任に関する原告の主張を失当と断じた。

2 瑕疵担保責任について
 ⑴ 2階床の剛性
   原告は、2階床が振動し、剛性がないという趣旨の主張をしていたところ、裁判所は、「床の揺れについては明確な評価基準等はなく、そもそも個々人の感じ方による差異も大きいものであるところ、原告の主張によっても、あるべき施工としてどのような合成が求められるのか不明であって、被告の施工がこれに満たないことを認めるに足りる的確な証拠はない。」として、原告の主張を認めなかった。
 ⑵ 断熱材
   原告は、断熱材が欠損しているという趣旨の主張をしていたが、具体的な「あるべき状態」が不明確な状態であった。
   この点も踏まえ、裁判所は、「原告の主張によっても、あるべき施工として、具体的に本件建物のどの箇所に断熱材を敷設すべきであったにもかかわらずこれが欠損しているという特定がされていない。」とした上で、「被告が提出する本件建物の矩計図や被告の標準図によれば、1階天井部に断熱材を施工するという設計になっていない」として、原告の主張を認めなかった。

3 不法行為責任について
本件建物は、検査済証が未取得ではあったものの、その後の任意協議の中で、法12条5項報告は完了している状態であった。
原告の請求内容は不明確であるが、当初、検査済証を取得しなかったことを不法行為と構成してきたものと思われる。
裁判所は、「被告は、建築基準法12条5項の規定に基づく既存建築物調査結果報告書を市に提出しているところ、これが受理されたことにより本件建物の法令適合性については確認されたと認められるのであって、検査済証が取得されていないことと原告が主張する損害との間にどのような因果関係があるのか不明である。」とした。

4 無償補修の合意について
原告は、原告が主張する瑕疵について、被告が無償で補修する旨の合意があったなどと主張した。
裁判所は、「無償であるにもかかわらず被告が当該履行の法的義務を負う合意が存在したのであれば、合意書等の徴憑を残してしかるべきところ、そのような裏付けは存在しない。そもそも原告の主張する契約内容は抽象的で施工の範囲も不明確である上、施工範囲を画する図面も見当たらない」として、無償合意を認定するだけの合意形成の熟度がなかったことを指摘し、原告の請求を否定した。

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