吉川 幹司
弁護士
パートナー東京事務所
工事途中に請負契約が合意解除された後、施工した工事に不具合が存在し、かつ、工期が遅延したことを理由として、施主が工事業者に対して損害賠償請求を行った事案。業者の代理人として訴訟を追行した。
同事件において、施主は、合意解除当時において既に工期が遅延しており、業者が施工した基礎等に不具合が存在したため、後工事業者に多額の補修費用を支払う必要があった等と主張した。
これに対し、業者は、工事途中に請負契約が解除されている本件では、解除時点において最終的に工期が遅延するか否か明らかではない以上、工期遅延は認められないと主張した。また、解除時点において工程表記載の工程より遅延していたことが問題となるとしても、同遅延は、施主より多数の変更工事の要望がなされた結果にすぎないと主張した。
加えて、業者は、施主が主張する瑕疵の主張に対して、工事途中に請負契約が解除されているため、業者が工事を完成させたわけではない以上、完成を前提とする瑕疵は問題とならない上に、施主が主張する不具合は、全て、合意内容及び建築基準法等の客観的な基準に違反するものではないため、何らの不具合も認められないと主張した。
その上で、業者は、上記主張を立証するため、図面及び工程表等を提出した上で、合意解除当時までに施工された工事は、合意内容とおりの工事であること示し、また、業者の設計図は法令等の客観的な基準に合致する合理的なものであり、後工事業者が行った補修工事は、後工事業者の独自の見解に基づいて行われたものにすぎないことを明らかにした。
その結果、裁判所より、施主の工期遅延及び工事の不具合を理由とする損害賠償請求を認めないとの内容の判決が下された。
ただし、裁判所は、業者に対し、合意解除時の清算の際に漏れていたと考えられる工事代金額の一部の支払を認めたため、その後、当事者間において、業者が施主に対し、施主の請求額の10分の1以下の解決金を支払う内容にて和解が成立している。
本件を担当した弁護士