内田 創
弁護士
パートナー福岡事務所
リフォーム工事だけではなく、新築工事においても、追加変更工事代金の有無と瑕疵の有無が争われる事案というものは、建築紛争の典型的事案と言えます。
当職が、弁護士になって初めて取り扱った事件の中で、リフォーム工事の追加変更工事代金の有無と瑕疵の有無が争われた事案があり、瑕疵の判断の中で、リフォーム工事ゆえの特殊性を踏まえた判断が示された事例でしたので、ご紹介させて頂きます。
リフォーム工事を請け負った工務店Xが、リフォーム工事中に500万円強の追加工事の発注があったとして施主Yに対して請負代金請求訴訟を提起したところ、Y側より瑕疵担保責任に基づく瑕疵修補請求権に代わる損害賠償請求の反訴が提起された事案です。
施主Yの主張する瑕疵の項目は15項目ほどに及びましたが、その中の1つに、幅900㎜の廊下の一部が14㎜にわたって傾斜しているが、それが工務店Xの施工に伴い発生した瑕疵であるとの主張がなされていました。Y側の主張する瑕疵の中では、この項目に対する瑕疵修補に代わる損害賠償請求というものが、既存床の解体、下地の再構築、仕上げ材の施工、と合わせて150万円近い請求になっており、最も金額の大きなものであったため、重要な争点となっていました。
当職は、工務店Xにおいて廊下に関して請負った工事内容は、既存の廊下床面に、12㎜のフローリング材を追い張りするとの工事内容であり、上記14㎜の傾斜は、施工に伴い生じた瑕疵ではなく、リフォーム工事の内容として、その傾斜を修正するとのリフォーム工事を請けたわけではない本件においては、法的な観点から、請負人であるXが責任を負うべき瑕疵とは言えない旨反論しました。
この点に対して、第一審は、「既存床面が元々傾斜しており、本件本工事におけるフローリング工事の施工後において存する床の傾斜は、これが原因であると認められる。そうだとすると、合意された方法による本件本工事の施工後において床面が傾斜していても、既存床材の傾斜を原因とする瑕疵一覧表記載⑪の項目は、瑕疵には当たらないというべきである。」との判断を示し、当方の主張を認めました。
なお、この案件は、Y側に不服があるとして、控訴されましたが、第一審で建築士の調停委員が関与した手続が行われていなかった点を踏まえ、地裁の調停部に回付され、現地調停などを経たうえで、調停委員会から提案のあった調停案で解決をするといった経緯を辿った点でも、特徴的な事案でした。
本件を担当した弁護士